光の指で触れよ (中公文庫 い 3-8)
光の指で触れよ (中公文庫 い 3-8) / 感想・レビュー
piro
『すばらしい新世界』のその後。これからの世界の中でどう生きて行くべきなのか、大切にすべきものは何なのか、そういった事を示唆する様な深淵で壮大な物語でした。バラバラに暮らす事になった林太郎・アユミ夫妻の生活の変化に冒頭から衝撃。でも、彼らの姿を並列に描きながら、彼らの哀しみ、迷い、愛情、そして理想とする暮らしを語るお話は、素のままの想いが感じられる。別々に暮らしながらも、どこかでしっかり繋がっているのだなぁと「確かなもの」を感じました。やっぱりこの家族が好きです。キノコかわいいなぁ。森介が益々頼もしい。
2023/06/10
まさ
こういう生き方もあるのだなぁと、読みながらあれこれと考えた。人との関わりや暮らしそのもの。いま見えているものでよいのか、見えていないものにも道は開けていくのではないか。そんなことを考えながらも、飛び込むことはなかなかできないなぁ。
2022/02/23
sabosashi
前作『すばらしい新世界』とともに連作とみなされ、千四百頁ちかい。 連作とはいってもこのふたつは、それなりにトーンがだいぶ異なっている。 リベラルなエンジニアは、リベラルな家庭にめぐまれ、低開発国援助を風力発電による灌漑という手段で手助けしようとする。 そのプロセスでいろいろな新たなことを学んでいく。 しかしやがて大企業のなかでの良心的な手助けには限界があることを悟っていく。 前に突き進むのを阻まれたエンジニアは足元を見つめることにする。 つまり、この大地から実りを得ることを。
2019/10/25
ハチアカデミー
A 作家は本書を書かざるを得なかった。『すばらしい新世界』が理想を追求したフィクションであったがために、その理想を支えていた社会的基盤が崩れた世界を。家族をはじめとした共同体とは何か、経済とは何か、教育とは、国家とは何か。いまあるものが、いまあるかたちであるのは何故なのか。人間の営みの中には、自覚すらできていないさまざまな制限・縛りがある。主人公たちの思考に連れられ、それを悪いというのではなく、自省すること、自覚することの必要性を、読者も考えさせられる。本書は、絶対者不在の社会でもがく私たちの物語である。
2013/01/09
Bartleby
前作「すばらしい新世界」では主人公たちの家族があまりに理想的に書かれてるんじゃないかと思っていたけれど、今作でその家族がバラバラになってしまったのを知ったとき、とても悲しくて、いつのまにか自分があの家族に愛着を感じていたことに気づかされた。今回も家族やコミュニティ、信仰や自然と人間との関係などの問題に、人々がじっくりと向き合っていく過程が描かれる。彼らが最後に出した結論に自分は全面的には賛同できない。でもそういう生き方もあるということを知った上でこれからの生き方を自分なりに考えてみたいと思うことはできた。
2014/03/09
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