ことば汁 (中公文庫 こ 55-1)
ことば汁 (中公文庫 こ 55-1) / 感想・レビュー
あんこ
『ことば汁』、暗い場所に迷い込んでしまったかのような印象を受ける短編集。女の醜くて生々しい部分を描いた物語でした。ぞわっとします。どれが夢なのか。気づけばおいでと手招きされた暗い森から出られなくなりそうな危うげな雰囲気を漂わせています。読むタイミングによっては、少し吐き気を覚えるくらい。怖いもの見たさで引き込まれていきます。
2013/08/31
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
ことば汁、だくだく溢れています。ザリガニ、鹿、雀、野うさぎ、蛇、幻想的な動物モチーフの作品が多い。「つの」と「すずめ」は一部リンクしている。日常から、いつの間にか幻想(異界)へ。「つの」の老詩人と秘書の関係が、いつの間にか、詩人の書いた詩の世界と重なりあう場面が好き。後、「女房」の「ああ!女房」というラストの一節。
2015/06/03
かんやん
短編集。それぞれ幻想小説というか、日常が悪夢のような、あるいは条理を欠いた世界へと移行してゆく。詩人の言葉に期待しすぎたのか、少々薄味だと感じた。おどろおどろしいモノや狂気を望んでいるわけではない。ただ非現実はもっと書き込まないと。読めば読むほど現実→幻想→曖昧模糊とした結末への移行をニュートラルに感じてしまって残念だったけれど、『花火』はとても良かった。中年女の妄想にちょっとだけシンクロしてしまった(笑)
2024/08/11
たま
普通の日常からいつの間にか別世界へと迷いこんでしまう短編集。妖しくて生々しくて、静かに怖い、大人の童話のようでした。嫉妬や欲望が人をけものにする過程が、爆発的ではなくじわりじわりとしていて、気がつけば後には戻れない場所まで辿り着いてしまっている状態がすごく怖かったです。それと同時に、老いてもなお女は女であることもよーく分かりました…しんどいような嬉しいような、でもしんどい。
2014/03/30
tom
小池昌代の本を連続して借りてきているのだけど、この本には、ちょっと困ってしまった。現実と非現実の境界を行ったり来たりしていて、現実の方もボンヤリとしているから、非現実の方は、ほとんど了解不能。私としては、すんなりと物語の中に入れないという事態に。ところで、小池さんの書く物語に登場する老人男には、なにやら腐臭を放つような雰囲気がある。どうしてなのだろう。「弦と響」に出てくる老人演奏家もなかなかすごかった。小池さんは、老人男に対して、特別の悪感情があるのかしら。年寄りの私としては、ちょっと気になってしまう。
2014/06/14
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