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楽しい終末 (中公文庫 い 3-9)

楽しい終末 (中公文庫 い 3-9)

楽しい終末 (中公文庫 い 3-9)

作家
池澤夏樹
出版社
中央公論新社
発売日
2012-08-23
ISBN
9784122056756
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楽しい終末 (中公文庫 い 3-9) / 感想・レビュー

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mocha

数ヶ月かけて読了。核、環境破壊、天災、生物としての行き止まりなど人類の終末を様々な角度から考察する。初出は90年「文學界」の連載。当初の『楽しい終末』の試みは書き進める毎に負のカードばかりが積もり、楽しくないものとなっていった。単行本化、文庫化と時を重ねるうちに人類の負債はさらに増え、この新版は2012年刊。あとがきには福島原発にも触れる。今またコロナという更なる脅威がこの本の1章を書き加えた。

2021/10/07

かめりあうさぎ

90年代に書かれた終末論。タイトルにあるような「楽しい」気分にはなれなかった。人間を知れば知るほど愚かだとも思うしそれを含めて自然なんだとも思うし、人間の歴史が浅すぎるので絶滅だってあり得るんだろう。個人としてどうすべきかという問いには一個の答えが提示されていて、それは自分が求めていたものだったからちょっと安心できる読了感だったのは救い。30年前に書いた本作に2012年にあとがきが追加されているが、ずっと核について危機感を持っていた作者が福島原発事故をどう受け止めたかについてはもっと深く知りたいと思った。

2021/06/18

ミツ

ブラックな笑い漂うタイトルにつられて。長らく絶版だったのが3.11の震災を機に復刊されたという経緯があり、核エネルギーと原子力発電所を巡る論考は今読んでもなお、むしろ今でこそ生々しい。核の他にも環境破壊や公害問題、恐龍の絶滅と人類の虐殺の歴史、人類の起源と宗教など話は多岐に渡り、世紀末の空気を濃厚に反映した終末論の総ざらいという感がある。肥大したテクノロジーを持て余し、途方に暮れ終末/救済を待つことしかできない人類の愚かで哀しい姿を眺める、この傍観者の視線はまさに心優しきニヒリストのそれであった。

2016/10/02

魔魔男爵

終末論を科学、哲学、文学の豊富な先人の書を元に考える評論。核、天体衝突、ウイルス、地球温暖化、進化の袋小路等の人類全滅シナリオの考察が、さすが理系の池澤で詳しくて楽しい。J・G・バラードやP・K・ディックの終末世界を滅びの美学として楽しもうという視点もSFファンには受けるだろう。人類滅亡が決定したとしても、河原でゴミを拾う生活を理想とする池澤はいいよな。

2017/07/23

H2A

「終末」がテーマ。「楽しい」とまで銘打っていても書くのは苦しかったと作者自ら言う。核の話題から始まって南北アメリカ先住民にヨーロッパがもたらした「終末」、環境破壊(一時話題になっていたフロンガス、アマゾンの開発による減少)、サルから人へ進化の袋小路と次々にテーマと対峙している。内容や文章が難しいわけではないが、テーマ自体が重いためやはりシリアスな内容。90年代前半に書かれているのだが今読んでも古びていない。

2023/04/10

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