ふるあめりかに袖はぬらさじ (中公文庫 あ 32-10)
ふるあめりかに袖はぬらさじ (中公文庫 あ 32-10) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
時世によって攘夷女郎として祀り上げられた亀遊。しかし、その実情をお園だけが知っていた。後の事を思うと吹けば飛ぶような時流へ乗り降りする浪士達は浅薄だ。だからこそ、嘯くお園の老練さと気丈さ、そして去った人への優しさが際立つ。彼女が「攘夷女郎、亀遊」を謳ったのは、時世の為に人並みに弔わう事が無かった亀遊への哀悼でもあると同時に愛した女性ではなく、己を優先し、米国へ渡った藤吉への皮肉だったのかもしれない。「華岡青洲の妻」も併録。ドラマからドロ沼の嫁姑物語として捉えていたが、序盤の仲睦まじい様に最初は虚を突かれる
2024/04/17
きゃれら
今週末歌舞伎座で観る予定の坂東玉三郎主演でかかる表題作の予習。いまは中公文庫も品切れで入手困難。主役級の病欠で急遽変更の演目だったので、増刷間に合わずでしょうか。図書館で借りたのは2012年9月の再演時の増刷とあって表紙は玉三郎さんの写真。その御蔭もあって、主人公お園は玉三郎さんをイメージしながら読みました。いろいろ演劇らしい仕掛けがあって公演が楽しみです。併録の「華岡青洲の妻」は、テレビドラマで筋を知ってて、嫁姑のドロドロぶりに避けてきた作品でしたが、今回は一種の医療ドラマとして面白かったです。
2022/06/22
ichiko
有吉佐和子はいつ読んでも私を裏切らない。見事なストーリーテーラー、感情の機微を書き尽くし、味わい深い日本語が薫る。この本は戯曲二編。有吉佐和子がすごいのは、女の感性で書いているのに、女性作家にありがちな感性に頼るがゆえの緩さがなく、冴えた知性が徹頭徹尾、作品内を走り続けてるところ。それを解説の坂東玉三郎がうまく書いている、「有吉先生は、お芝居が、文章としてだけでなく、芝居として立ち上がった時に感動的に見えるためにはどうすればよいかということを熟知していらっしゃった」美しく繊細で、かつ立体的な文章なのだ。
2016/05/24
mnr
遊郭のことが気になって調べていると、「ふるあめりかに 袖はぬらさじ」という辞世の句に出会った。それから数日後、何の気なしに図書館で本を物色していると、見慣れた句がそのまま目の前にある。思わず借りて読むと、これはおもしろい。お園がとてもチャーミング。 それから併録の作品は、女性にとっては「あるある」、男性にとっては理解できないであろう、嫁姑の確執を描いた作品。賢くて、気高くて、献身的で。登場人物は誰も悪く描かれていないからこそ、静かに描かれる不和が不気味でリアル。
2015/08/05
uchi
先月大地真央が、舞台をやっていました。
2019/12/03
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