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アイロンと朝の詩人 回送電車III (中公文庫 ほ 16-5)

アイロンと朝の詩人 回送電車III (中公文庫 ほ 16-5)

アイロンと朝の詩人 回送電車III (中公文庫 ほ 16-5)

作家
堀江敏幸
出版社
中央公論新社
発売日
2012-10-23
ISBN
9784122057081
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アイロンと朝の詩人 回送電車III (中公文庫 ほ 16-5) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

我々の認識では堀江敏幸氏といえば小説家(芥川賞作家だ)であり、フランス文学の研究者なのだが、そんな彼が大学に入学するまでは国文科志望だったというのは初めて知った。「栴檀は双葉より芳し」と言うが、さすがにここに開陳されている『伊勢物語』の読みは、物語としての妙味の核心を捉えている。フランス小説もいくつか俎上に上るが、そこでは一つ一つの言葉を疎かにしない彼の姿勢に、我々も小説の読み方の反省を強いられるのである。なお、表題は学生の誤訳から連想を膨らませていったものであり、ここにも堀江氏の魂の自由な飛翔が窺える。

2015/07/24

KAZOO

Ⅱに引き続いての堀江さんのエッセイ集です。これもやはりわたし的には楽しくてすぐ読んでしまいました。特に本屋古本屋について書かれているところは楽しくなります。高校時代は中世文学志望であったのがフランス文学を専攻しての自分の気持ちなど。また大学受験のときに東京に出てきてのはなしなど「堀江」三四郎的な感じで、物語にできるのではないかと思いました。このエッセイ集は何度も読み返すことになりそうです。まだ文庫でⅣは出ていないのですね。

2015/05/26

ぽち

本書で白眉なのが小島信夫との回想を綴った編に続く「ファラオの呪いが町田まで」の冒頭、頁を跨いでの続く一文、――その日の朝、徹夜をしてなお仕事を終えられなかったおぼつかない足で、私は小田急狛江営業所「境91」系統乗り場に立っていた。行き先不明の旅の出発点を、いつもお世話になっているどこかのバスの営業所にしようと決意したからである――編集の妙でもあるのだけど、こういう文面にぶつかった瞬間には立ちくらみ、眩暈に似た感覚を覚える、わたしにとって、それは剥き出しの、小説そのものに触れてしまったと思える瞬間なのだ

2016/08/04

うた

再読。「プルーストへの感謝」ってこんな感謝のされ方をしてもプルーストは困惑するだろうに笑。一方、「キーパーの指先をかすめたい」での、読んだ本について語ることのむずかしさは共感が持てる。それが好きな本であるほど、面と向かってとくとくと語ることが難しくなる。

2019/02/25

タイコウチ

「キーパーの指先をかすめたい」というエッセイで、堀江さんは書評をサッカーのPKにたとえて「キーパーの指に触ってからネットを揺らす」、そんなきわどい書評を書きたいという。「キーパーが一歩も動けないPKは、たしかに美しい。だが、そこには対話がない」とも。書評に限らず、本当に楽しい会話とは本来そういうものかもしれない。よく「言葉のキャッチボール」なんて比喩で会話を語ることがあるけれど、会話の妙とは、たとえ気心の知れた仲でも、常に自分たちの予想から少しずつずれていく、そんな世界の広がりを教えてくれるものだと思う。

2015/09/10

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