箱館売ります(下) - 土方歳三 蝦夷血風録 (中公文庫 と 26-21)
箱館売ります(下) - 土方歳三 蝦夷血風録 (中公文庫 と 26-21) / 感想・レビュー
えみ
勝利に満点を求めない。「駄目だったら命を落とすだけ」絶体絶命の場面で覚悟ができている男の、何て輝かしいことか。軍神、蝦夷地に降臨。土方歳三、ここにあり。戦いの中で持つ覚悟はいくつもいらない、たった一つでいい。貫き通す男の美学、半端じゃない!たとえ命を失っても誇りは失わない。そんな彼の姿勢に感化され、本当に守るべきものに気付いた男たち。彼らは信念を貫き通すために昨日までの敵に命を預けることを決意できるのか。素人同然の少人数の部隊を率いた土方はロシアの領土拡大の企みを阻止できるのか。綺麗に死ぬ、そんな生き方。
2023/08/13
優希
ガルドネル事件はよく知りませんでしたが、歴史的に見ればこういう裏取引があっても違和感はありませんね。ロシアの領土拡大に気づいた土方たちは日本を守るために立ち上がります。北海道を揺るがす大事件を率いる土方がとにかくかっこよかったですね。日本をロシアから救うのは旧幕府軍も新政府軍も関係ないのです。箱舘での土方は「新選組・鬼の副長」ではなく戦いに命をかける武士に見えました。巧みに指揮をとりながら戦いに挑む姿にただ惚れぼれするばかりです。ロシアの視線のもうひとつの戊辰戦争の物語は痺れるかっこよさがありますね。
2014/09/12
シン
下巻でようやく存在感がました土方歳三。テンポもあって、読みやすく、あっという間に読了。ガルトネル事件て実際にあった事件だったんですね。初めて知りました。箱館での榎本武揚を扱った大変興味深い作品でもありました。
2014/04/07
kaoriction@感想は気まぐれに
「過去」という歴史、史実は変えられない。そして、そんな歴史に「タラレバ」も無い。けれど、考えてしまう。「もしも、あの時あのまま、箱館を売ってしまっていタラ」。戊辰戦争と箱館戦争の影に埋もれてしまったガルトネル事件。「もしも」が現実になっていたら、いまの日本という国、北海道という地は、どうなっていたのか…。オソロシイ限りだ。上巻とは打って変わり一気読み。思うことは多々あるが、変わることのない「過去」の一直線上に現在を生きる私たちがいて、その先に「未来」があるのだ。ほんの数ミリの間違いや成功で、未来は変わる。
2015/01/03
おにく
下巻は、蝦夷政府とガルトネル兄弟との土地貸与交渉も大詰め。とはいえ日本の領土を切り売りした勝利は果たして勝利と言えるのか?そんな中、取引にロシアの黒幕が絡んでいることを嗅ぎ付けた土方歳三と義勇民たちは行動を起こします。それにしても、この本は上巻の帯に「読んだら絶対、土方に惚れる」とあります。かつて“鬼の副将”と恐れられた土方歳三は函館では角が取れたのか、周囲から「慈母のようだ。」と言われたそうです。この物語はフィクションですが、このころの彼の心境を想像しながら読むのがおすすめです。
2016/07/14
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