望月青果店 (中公文庫 こ 57-1)
望月青果店 (中公文庫 こ 57-1) / 感想・レビュー
優希
母娘のほろ苦い関係を軸にしながら、盲目の夫との生活や遠い恋を描いている、甘くて柔らかく、切なくて優しい物語でした。母親の病の知らせを聞き、帰国しようとした矢先の大雪と停電。そこから思い出される記憶。母との確執、遠い恋は実家の望月青果店の果物と絡み合い、瑞々しさと鋭さで気持ちを描き出していました。アラフィフ女性の心の揺らぎやうつろいの雰囲気が心地よかったです。そしてそれは人との縁に繋がっているんですね。人と人のつながりのあたたかさを見たようでした。自然に描かれた関係が心に馴染みます。
2015/06/27
えりこんぐ
母・咲恵の毒舌キャラ、母娘の長い確執などとても濃い内容でありながら、大きな暖炉の前でポカポカと温もっている様な読み心地。故郷を、母親を避ける鈴子もいつも果物を気にかけていたりして...距離感が近すぎるとついトゲトゲしてしまう気持ちはわかるなぁ。全盲の誠一郎の穏やかさが良いバランスだった。
2017/11/01
ちょこまーぶる
読後はホッとした一冊でした。母と娘の長年にわたり言葉のかけ違いからの関係の悪さを主人公の娘の周りの人と盲導犬が温かく見守るという感じの話ですが、本音を言葉にできないという事は人生の中では良くあることだと思いますね。そんな時に確執が起こったりするんですよね。でも、二人の関係をしっかりと支えてくれているご主人や彼女の生き方を導いてくれているような幼馴染と親戚のお姉さん、そして彼女を見つめ続ける2匹の盲導犬・・・彼女は恵まれているなぁ~と思いましたね。巻末の母娘の会話は氷が解けていくような感じになりました。
2020/08/14
ワニニ
故郷から逃れてきた感の海外かつ田舎、そして雪嵐と停電という閉ざされた中、盲目の夫と盲導犬と暮らす主人公は、母の病の報を受けた帰国前、心の奥底にある様々を振り返り、ざわついた記憶を甦らせる。似た者同士故か素直に愛情を表現出来ない母子は、幼い頃から上手くいかない。実家の営む青果店と各章果実タイトルを絡め、瑞々しく鋭く気持ちを描き、アラフィフ女性の心の揺らぎ、うつろいが雰囲気良く書き進められるが、余りに出来過ぎな夫と父、初恋男性とのやり取りは、自分という幸せな人生を盛り上げる登場人物と出来事にしかなっていない。
2014/11/04
野のこ
鈴子の女心、娘心の理屈では表せない感情。最後の「どうしようもなく、母と娘だった」にもやもやした気持ちがストンと落ちました。白菊の花びらがはらはら舞い落ちる「フラリー」細かい砂のような雪が激しく舞う「パウダー」の呼び名が素敵。誠一郎さんの「柔らかなカシミアのショールかマフラーを背中から肩にふわっと掛けられたような声」きっと暖かな声なんだろうな。それに「僕の音には色がついている花の形は香りでわかる」と言うところも素敵。果物と野菜のサラダやってみたい(グレープフルーツに柔らかレタス、りんごにセロリ)
2017/11/11
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