うつけの采配(下) (中公文庫 な 65-2)
うつけの采配(下) (中公文庫 な 65-2) / 感想・レビュー
優希
物語は関ヶ原に向けて動いていきます。ただ、広家は毛利を徳川と戦わせたくないという思いがあるようでした。それは元就や隆景の遺志でもあった。しかし、一方で恵瓊が石田三成に接近し、静かに徳川との戦いへと歩んでいくのに、恵瓊の策略家っぷりを見ずにはいられませんでした。結果として毛利輝元は反徳川勢の総大将にされるのですから。広家の「戦わないための戦い」が辛い。天下を望まずに家を残すという想いが刺さります。関ヶ原までの戦国史を毛利の視点で見ていくのが興味深くもありました。
2016/11/28
巨峰
まず、関ケ原の戦いの描き方が面白かった。上杉と石田は特に連絡をして兵をあげたわけでもないとか、家康ははじめ石田三成らの小規模な反乱とみていたとか、従来の解釈と異なるところが多数。でも、電話や郵便のない時代だと考えるとこの解釈結構まとをえてるのではないか。スーパーマンのいない戦国史として出色。本当のうつけもの「毛利輝元」を擁きながらなんとか家を残した毛利家の話として興味深かった。良作です。
2015/12/06
Bibliobibuli
広家が、持ち前の武功ではなく、知略をもっての恵瓊や家康と戦い、勝利をおさめた(本書を読むと広家が家康に勝ったような気がしました)のが、印象的でした。最終的には明治維新が起こるのですから、広家はやはり家康に勝ったのですね!
2018/04/22
流言
恵瓊との勝者無き戦い。最終章で家中から冷たい視線を向けられる中、関ヶ原ではまだ幼少だった毛利秀就だけが広家に理解を示してくれたというのはいいシーンだった。現代でも『もし関ヶ原で西軍が勝利していたら?』という夢想がなされることは多い。それほど魅力的な勝利が目前にぶらさがっていて、それでもなお動かないという決断を下すことができた。それまでは叔父・隆景に託された思い、父祖・元就が課した遺訓に呪いのように囚われていた広家が、その決断をくだすことで朝鮮で『勝ちすぎた』叔父をある意味で越えた、という流れは秀逸だった。
2016/05/08
あっこ
吉川広家が人間味があって魅力的に描かれていた。誰もが疑心暗鬼に陥るなか広家や黒田長政、井伊直政などの友情や信頼関係はとても清々しく感じられた。苦労を共にし、共に困難を乗り越えもの同士の確かな絆は純粋にかっこよかった。広家の家康への懇願の書状は感動的だった。でも、毛利家中ではそれが理解されていないのがさみしい。
2015/02/27
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