汽車旅放浪記 (中公文庫 せ 9-2)
汽車旅放浪記 (中公文庫 せ 9-2) / 感想・レビュー
saga
著者とは二回り近く年長の宮脇俊三を鉄道ファンとしての祖型と言い切ってしまう筆致が良い。宮脇氏が自分史も含め歴史と鉄道を結び付けた。著者は文学と鉄道を絡めて、素晴らしい鉄道紀行文の書き手だと思った。紀行文として絵になる路線が確かにある。既読『いきどまり鉄道の旅』、本書、読んでいる『おんなひとりの鉄道旅』では共通する路線が多いのもそのためだろう。松本清張、太宰治、夏目漱石にまつわる記述も良かった。
2018/01/28
chanvesa
特に電車に関心はない。『門』の舞台のイメージがなかったのだが、「赤城下」という(265頁)。寂しい雰囲気の崖。あの神楽坂の町並みに設定されていたとは。そして内田百閒のこと。「必要以上に老成を嫌い、必要以上に若さを価値と信じた」関川さん(310頁)と、61歳にして威張っていた百閒先生。恐れ多いが百閒先生の気持ちにシンパシーを感じる。老成は、強烈な憧れを持つ師への微笑ましいアプローチの一つなんだと思う。そして、ここまでやっていいのではという、ちょっぴりの甘えという人間らしさを感じるのだ。
2018/02/12
さっと
このまえ読んだ北森鴻の小説にいまはなき寝台特急「日本海」(修学旅行のときに乗った)が出てきて大変なつかしく思いながらそういや文学と鉄道のかかわりを説いたものってあるのかしらんと思っていたところにぴったりの本書。汽車ぎらいと言いつつそれなりに旅はしたし「現代小説」ゆえに当時の世相を切り取るうえで避けられなかった車中を描写した夏目漱石。貧しさや家族にしばられながら束の間の逃避行が汽車旅だった松本清張。最愛の妹とし子を失くしたのちのサハリン行きに銀河鉄道を見る慟哭の宮沢賢治。鉄道から日本文学へのアプローチ。
2020/11/22
imagine
間口の広いタイトルとは裏腹に、開通時期、営業区間、勾配の比率など専門的な数字が度々登場。別掲の地図でも網羅できないほど、本文で詳細な踏破工程が示される。その中にあっても著者の観察眼は健在で、乗客の様子や地形の描写は鋭い。全般に渡って、鉄道という観点から著名な作家の特性を詳しく分析。特に宮脇俊三と夏目漱石には多くの紙幅を割いていて、著者にしか発見できないであろう指摘がなされている。
2017/01/10
広瀬研究会
旅っていうのは、空間を移動するだけではなく、時間も移動するものなんだなーということを強く印象づけられた。確かに旅行すると、その土地の歴史とか伝統・文化に目が行きます。太宰治の津軽には一度行ってみたいな。ウニ食べたい。
2017/01/03
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