大岡昇平 歴史小説集成 (中公文庫 お 2-12)
大岡昇平 歴史小説集成 (中公文庫 お 2-12) / 感想・レビュー
月をみるもの
井上靖との論争は、正直因縁ふっかけてるようにしかみえないし 、この本に収められている作品群を「小説」と呼ぶこともありえない(川村湊の解説は完全に破綻している)。しかし、どれを読んでも滅法面白いのだから、そんなジャンル分けはどうでもいい。「Story」と「History」は共通の語源を持つわけだが、「将門記」や「南柯紀行」から大岡が読み解こうとするものは、そのどちらでもない。言わば「野火」と「俘虜記」のあわいにあるなにか、なのだろう。それはやがて「レイテ戦記」へと結実する。
2020/08/30
Tatsuhito Matsuzaki
本書は筑摩書房『大岡昇平全巻第八巻』を基に「高杉晋作」「竜馬殺し」「姉小路暗殺」「天誅」「挙兵」「吉村虎太郎」など10の作品を収めた短編集。 全作品を貫いているのは著者の戦争時の逃亡・捕虜体験と批判精神、史実に忠実に在りたいという厳しい姿勢です。 タイトルにある歴史小説というよりは、日本史解説・歴史考察的な秀作です。 ワタクシ的には、他の作品とは時代が異なる故郷の英雄「将門記」が好きです。
2021/12/19
Toska
一般に「歴史小説」と聞いて我々が想像する作品とは異質な読み味。エッセイとか歴史評論と表現した方がしっくりくる。個人的にはいつもの大岡さんだなあ、と面白く読めたのだが、人によっては何じゃこりゃと感じるかもしれない。とにかく「事実」へのこだわりが強烈で、作家の想像力は意識的に封印されている。他方、大岡には敗兵体験にアイデンティティを持つという無比の特色があり、吉村虎太郎や大鳥圭介を取り上げた作品ではそれがよく活かされていた。
2023/05/10
miunac
大岡昇平は歴史小説に想像力も潤色も要らぬと言った。返す刀で、私の知る限り、森鷗外、海音寺潮五郎、井上靖、ツヴァイクを切り捨てた。森鷗外を論難したため国文学者に嫌われた。そういった経緯のある大岡の歴史小説は、当然のことながら他とは一線を画す。我々が一般に思っている小説ですらない。小説は何をどのように書いても良いのだ、というテーゼを持ち出して、やっと小説と呼べるものである。そのスリリングなことと言ったら!これこそが歴史小説である。『ゲド戦記』『幼女戦記』より『レイテ戦記』の方が「戦記」として正しいように。
2020/03/15
不羈
小説というより大岡さんの歴史エッセイだった。原書や関連の古書を通じた平将門の乱の考察は難解な点もあるけれど、その視点は好きだなぁ
2020/03/28
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