隼別王子の叛乱 (中公文庫 た 28-18)
隼別王子の叛乱 (中公文庫 た 28-18) / 感想・レビュー
豆乳くま
表紙からは想像できない重々しく読むのにでとても時間がかかった。隼別王子とタイトルにありますが、結局のところこれはオオサザキ大王(仁徳天皇)と磐之媛太后の話であった。大王が恋い焦がれた年若い女鳥の姫は大王の年の離れた異母弟隼別王子と恋に落ちてしまった。権力で女鳥を我が物にした大王、力尽くで奪った隼別。日本のロミオとジュリエット、とあるけれど若さ故の了見の狭さと残酷さでしかない。何もかもわかったうえでの大王の残忍さ、そして太后の自分でも認めない大王への一途な愛の方に軍配を上げるのは私が若くないからだね(笑)
2017/05/25
たけはる
読み終えて、なんとも言えない淋しさに襲われました。この物語に登場する人々は、誰も彼もうつくしく、かなしい。大鷦鷽と磐之媛の、酸いも苦いもぐっちゃぐちゃになりながらなお情から離れられない関係性が、しみじみと好きです。なんだかんだ、大鷦鷽の一番の妻は磐之媛だったのだろうな、と思います。こういう苦味と深みの滲む話を、私も書いてみたい。
2019/07/30
寝覚の朔
色んな人物の視点から代わる代わる語られる展開にちょっと戸惑いつつも、強く激しい愛憎劇で目が離せませんでした。破滅的な美しさで結ばれる隼別と女鳥、若い娘に執着する大王、大王と複雑な関係性で結ばれている大后。後半の大后を中心としたその後の話もまた……因果は繰り返し、運命は覆らない皮肉。結末には思わぬ裏切りもあり……久しぶりに古代史ものにどっぷり浸れる作品を見つけた気がします。 あと、これは里中満智子先生がコミカライズされたらピッタリだろうな……愛のために愛ゆえに愛があるから愛を求めて、という感じなので。
2018/03/12
ベル
古事記や日本書紀の時代が好きなのもあって。 すごい恋愛小説でした。大恋愛ということではなく、恋におち、その先に残酷な死が待っていると解っていても留まれなかった隼別と女鳥、自分勝手な大王と、愛し過ぎ執着の強すぎる大后。隼別を愛した人たちや住ノ江、関わる人々全ての愛憎が濃かった。それぞれの視点で話が進んでいくのが面白かったです。田辺聖子さんの本、もっと読もう。
2017/05/21
るびぃ
その時代に忠実で、動き回る王子や女鳥の様子が身につけた鈴の音とともに感じられる。 文章から映像が浮かび上がる。 心に染み込むその情景が、さすがである。 目が離せない。 若者の気持ちが切ない。 周りの大人の気持ちも哀しい。 しばらく、その世界観にとらわれてしまった。
2021/05/27
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