もののふ莫迦 (中公文庫 な 65-6)
もののふ莫迦 (中公文庫 な 65-6) / 感想・レビュー
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
本屋が選ぶ時代小説大賞2015受賞作。己の信ずるもののふの道を、ひたすら突き進む岡田越後守と名乗る男。策謀が蔓延る戦乱の時代に、むさくるしい言動の中にも、ときに一陣の爽やかな風を感じさせてくれる、そんな男の物語。著者初読みですが、歴史小説としてはまあ王道。ただ、「こうあるべき」がちょっとくどすぎたか。信念の連呼ではなく、さりげなく行動で示せたら更に良かったかも。ボリュームもありなかなか骨太、他の作品が気になる作家です。
2019/08/10
おかむー
太閤秀吉のもとの朝鮮出兵を舞台に描かれる、己の信ずるまま「もののふの道」を追い求めた岡本越後守。彼を主人公としつつも、肥後の姫君・たけを間に挟んで、秀吉に仕えることこそを「もののふの道」と信ずる加藤清正との対比こそが物語のキモで、読み手は信念を貫く越後守に憧れながらも己の立場に苦悩する清正にもまた共感させられる。そんな二人のはざまで翻弄される粂吉は、ある意味読み手の代理なのかもしれない。『よくできました』
2017/10/23
さつき
主人公の岡本越後守の我を曲げず、長いものに巻かれない生き方に圧倒されました。敵役の加藤清正もただの猪武者ではなく、自分の立場に懐疑を覚えつつも、あくまで主君に忠たらんとする姿が良いです。秀吉の朝鮮出兵の悲惨な状況には胸の詰まる思い。登場人物たちがもがき、逡巡し、それでも恨みに支配されることなく自分の信じていく道を生きていく姿には悲しみと共に希望を感じます。
2017/07/11
如水
話は秀吉の天下統一直後の肥後(熊本)の国人一揆から朝鮮の役が時代背景。岡本越後守(元甲斐親英家臣、原則に言うと家臣じゃないけど家臣に近い者ですね、因みに親英の父は無敗を誇った阿蘇氏家老甲斐宗運)と加藤清正を中心として物語は進みます。お互いの『もののふ』の信念の対立から朝鮮半島で敵味方に分かれて争う、と言う話です。一般的に岡本越後守=沙也可説が有りますが完全ほぼ無視です。一言で言えばどちらが『莫迦』な程に信念を持つのか?がキーになりますが歴史小説と言うよりかはエンターテイナー的な方に走ってます、作者が。
2017/07/07
塩崎 周司
本屋さんが選ぶ時代小説大賞受賞作である。舞台は戦国末期、秀吉の島津攻めに翻弄される肥後の国。頑固な肥後人岡本越後守の武士魂が莫迦げるほどに美しい。秀吉の部下加藤清正との確執は朝鮮侵略へと続き、一時は清正の部下とはなったものの、その理不尽な侵略への反発から「降倭」(朝鮮軍へ下った日本兵)となり、清正軍を攻め立てるのだ。弱者の側に立たんとするその心意気と、たけ姫との切ない恋物語が読みどころである。
2017/08/03
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