星戀 (中公文庫 の 4-12)
星戀 (中公文庫 の 4-12) / 感想・レビュー
やすらぎ
シリウスとオリオンが絶望を励ましてくれた。星に戀をした。何処へ行き何があっても、仰ぎ見れば煌めいている星屑。暫く月なければ美しい星月夜。永久に見つめれば蛍光。野尻氏、山口氏の世界観をどこまで感じ取ることができたのだろうか。✨冬の川 金星うつす やさしさよ✨私も夜空を恋ふことができたのだろうか。✨螢火と 天なる星と 掌をこぼれ✨星の光に言葉を乗せると、こんなにも輝くのだろうか。瞬きさえも届かないほどの遠い星を想う人間もまた果てしない。夜明けの風が吹く頃、本書を閉じてまた仰ぎ見る。微光から一つずつ消えてゆく。
2023/04/21
六点
星の民俗学者と呼ばれた野尻抱影と、昭和を代表する俳人、山口誓子の俳句のコラボレーションによる随筆集です。兎に角、両者の日本語の美しいこと。六点は山口誓子の「自己が自然に対して屹立する」俳風がとても、好きになった。後鳥羽帝や源実朝の和歌と通底するものがあると思った。そんな小理屈は置いておき、この書が昭和20年代に著され、中公新書の初期刊行物だったということにも、驚かされた。名紀行作家、編集者であった宮脇俊三のセンスに怖さを感じる。畏愛する読み友EMI様ご紹介の一書。あの方の選書眼はどうなっているのか!
2022/08/18
ふう
すてきなタイトルでしょう。この本は2017初版となっていますが、底本は1954年発行。星を愛する二人の随筆と俳句の作品集で、描かれている星空や風景、季節は昭和20年代のものです。わたしが子どもの頃でさえ、鹿児島で見ていた星空は、それこそ宝石箱をいくつもひっくり返したように美しいものでしたが、戦中戦後はなおさらの美しさだったことと思います。独特の言い回しも味わい深くきれいです。「銀漢」は天の川。『銀漢や水の近江はしかと秋』北斗七星は知っていましたが、南斗六星もあることを初めて知りました。
2017/10/30
ベル@bell-zou
忘れられないのは、10年前の3.11。地上の光が失われた夜。ふと見上げた星空の美しさに見惚れ、畏れた。山口誓子の序文と最後の随筆。台風で避難した先からの帰路、月夜の星空の美しさが語られている。人の営みは儚く、自然の力には抗えない。同時に、自然の美しさに一瞬何もかもを忘れ”しずかに強く”励まされるのだ。星の巡りに合わせて誓子の句を引く野尻抱影の随筆。そうか、星を眺める人には太陽や月と同じように星も上るし沈むんだなぁ。まだまだ自然が生活の間近にあった時代。イメージするには遠すぎて別世界のようなのに ↓
2021/02/07
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夜空の星が目に写ると心にざわざわとしてきました。正直、俳句の素養のない私には手にあまる書籍です。でもゆっくりと味わいたいと愛着が沸きました。おそらく山口誓子さんが好きになったようです。過去現在未来に渡って変わることない星々の夜空があの日あの時の記憶を呼び起こす。私も子どもの時の夜空に引き戻されました。夏の夜空の思い出は多い。夢中になって懐中電灯で夜空の星を照らした私の隣いた人。団扇で扇ぐ風。優しく頭を撫でてくれた人はもういない。しみじみと…不思議な夜空の魅力に取り憑かれる人は多いようです。→
2022/08/27
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