内なる辺境/都市への回路 (中公文庫 あ 18-5)
内なる辺境/都市への回路 (中公文庫 あ 18-5) / 感想・レビュー
HANA
エッセイと対談、インタビューをまとめた一冊。正統と異端、農村と都会、芝居に写真に文学論と、阿部公房を理解するに当たって重要なキーワードが本人の言葉で記されているのは貴重。特に興味深かった部分はラテンアメリカ文学、特にガルシア=マルケスへの評価。ただ四十~五十年近く前の発表という事で、現在の眼から見ると気になる部分も多々あり。社会主義への評価とか農村と都会の問題を形而上な問題として取り扱っている部分とか。ともあれ昔熱中した身としては、かつて読んだ作品の作家自身による解説としても面白く読むことが出来た。
2019/10/10
Vakira
なんと コボさん 新刊と思いきや「都市への回路」と合体して再版らしい。とにかく読んでなかったので見つけて嬉しい、即買い。コボさんのエッセイは初読みだ。「内なる辺境」とは人間の内面的な話と想像。But全然違いました。人間の集合体における「正統」と「異端」の話で、国家に内在する異端のことであった。この正統と異端、言い換えれば定住と冒険。その考えは遥か大昔の人類の起源におよぶ。コボさん 凄い地頭力。人類の進化に思いを馳せる。人類の前の原人、肉食のアウストラロピテクスと草食のパラントロプスは一定期間共存していた。
2019/06/18
風に吹かれて
1971年刊『内なる辺境』、1980年刊『都市への回路』など収録。 文体についての安部の語りがとても理解しやすい。翻訳で文章は消えるが文体は消えない、文体は構造に関わることなのだ、という旨の説明が腑に落ちた。人間の在りよう、社会の在りよう、時間の在りよう、そういったものの「構造」を書き現わすのが文体だということだ。 そして、現代の文学の課題は「都市」を描くこと。公房の作品には失踪や逃走がしばしば描かれる。まさに都市の辺境への失踪や逃走だ。➡
2020/11/16
浪
エッセイとインタビューを収録。著者にとって文学とは言語という論理から直感を見出し、さらにその直感から論理を生み出していくというような螺旋運動であるという。そしてそれが人間の精神の展開であるとも。直感(感情)ばかりが先行し論理(理性)が軽んじられる傾向にある現代には重要な考え方だと私は思う。
2019/09/22
ケー
安部作品で抱いていた感覚を小説ではない形で全て語ってくれた気持ち。あと本のタイトル本書内で度々言及されていたカフカとマルケス。どちらも読んだことないのでいずれ読みたい。
2019/06/15
感想・レビューをもっと見る