珍品堂主人 - 増補新版 (中公文庫 い 38-3)
珍品堂主人 - 増補新版 (中公文庫 い 38-3) / 感想・レビュー
NAO
戦中から戦後にかけて名を知られた泰秀雄という骨董屋をモデルとした小説。彼は骨董だけでなく料理屋もやっていて、戦後すぐ千駄ヶ谷で開いた「梅茶屋」は疎開先から帰ってきた友人たちで賑わい、文士のたまり場のようになって、小林秀雄、青山二郎、河上徹太郎、今日出海、三好達治などが毎日のように出入りしていたという。骨董屋同士の騙し合いから始まって、料亭を任されることになりその料亭から放り出される経緯などが面白おかしく描かれている。来宮という骨董好きの文士との交流が微笑ましいが、この来宮は小林秀雄だそうだ。
2024/02/02
コーデ21
昨年読んだ谷崎潤一郎の『台所太平記』同様、さすが文豪!と納得の一冊でした。骨董屋・珍品堂主人の周りの奇々怪々な(笑)人間模様や、料亭「途上園」の経営をめぐる生臭さなど、実に鮮やかな筆さばき✨ 最後まで飽きずに面白く読めました。TV「開運なんでも鑑定団」お好きな方に、おすすめの一冊かも~(*´艸`*) ずいぶん前に読んだ村田喜代子著『人が見たら蛙に化れ』を再読したくなりました🎵
2022/04/20
こすも
今年は井伏鱒二の生誕120周年なんですね。今年1月刊行の増補新版は、自作解説的なエッセイに、珍品堂主人のモデルとなった秦秀雄に関する白州正子のエッセイ、秦秀雄との骨董品買い出し紀行まで収録され、まさに『珍品堂主人』完全版!といった趣です。この秦秀雄という人は、北大路魯山人が作った高級料亭・星岡茶寮の初代支配人で、魯山人と喧嘩して辞めてしまったのですが、この作品でも珍品堂主人は違った形で料亭を追い出されます。この作品は、リズム感溢れる軽妙な文体で珍品堂主人の人間臭さを描ききった、とっても可笑しい小説です。
2018/12/06
ワッピー
何が潜むかわからず、自分の勘を信じて突き進むも、魔の域があり、魔の刻があるというのは、他の本でも知っていたけれども、ここまで自分のことを韜晦し、他人を出し抜き、それでも結局は何が何だかわからない、あな恐ろしきかな、骨董界。珍品堂主人も騙し、騙され、立て直しのために始めた料理屋商売がまたも泥沼に。どこまで本気で言っているのか、自分自身でも定かではないようなところに、なぜか突き抜けた良さがあります。珍品堂同行記「能登半島」、白洲正子さんのあとがきで3Dの珍品堂を楽しめます。世界は循環することを実感しました。
2018/05/22
秋良
凡人には分からない骨董狂いたちの腹の探り合い、化かし合いがすごい。相手を出し抜いたと思えば一杯食わされたり。巻末の、そんな骨董百鬼夜行を温かい目で見つめる白洲正子の解説が良い。
2018/05/21
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