レイテ戦記(四) (中公文庫 お 2-16)
レイテ戦記(四) (中公文庫 お 2-16) / 感想・レビュー
ベイス
これを小説とする向きも多いようだが、少し無理がある、というのが読後感。内容の9割は部隊がどのように動いたかの詳述に割かれており、そこに物語の機微はほとんどない。文献を調べぬいて時間をかけさえすればモノにできる、というと言い過ぎだろうか?部隊はどのように配置されどのように動きどのように破れ去っていくか、その全体を俯瞰することには成功しているが、著者が志した「兵ひとりひとりの鎮魂」となると、むしろ兵士の顔は覆い隠されていて、著者の思いとは逆の作用をもたらしている、と思う。これは小説ではなく、戦記だと思う。
2023/07/09
おたま
(一)から数えて四カ月、やっと読了した。遅々とした進度。がしかし、この四カ月に渡って、大岡昇平の描くレイテ戦の詳細に向き合い続けた、濃密な時だった。この最終巻では、レイテ島北西部にまで追い詰められた日本軍の壊滅、そして、生き残った者たちの様子が描かれている。現場から逃亡する将校がいる。戦線を離脱して投降もせず遊兵となる者がいる、飢餓に苦しみ人肉食にまで至る者がいる、そして最終的に投降して捕虜となる者もいる。大岡昇平はどのような者をも公平な目で見つめて、末路を見届ける。それが自分の使命のようにして。
2023/11/23
Book Lover Mr.Garakuta
【図書館】【速読】【再読】【既読】:このシリーズだけでは、全体像が把握できないが、激戦の声を聞くには十分たる話で、日本ぐ8万の兵力が生存者は2500名。そりゃ負けるはと思ったが、アメリカの戦死者の数も、相当なもんだろうと伺える。戦争のむなしさと軍部と政治家の無能さを感じたシリーズであった。
2023/04/22
塩崎ツトム
「玉砕」ではなく、最後の籠城拠点カンギポッド山からは「誰も降りてこなかった」。戦後すぐに捕虜になった士官が投降を促しに行こうと申し出ると、「あの山にはもはや誰もいない」という理由で断られる。だれからもその勇気を称えられるわけでも、犬死にを哀れに思われるわけでもなく、一切の記録もなく、ただ「消える」。海の藻屑になったわけでもない。そういうことだ!
2022/11/19
しんすけ
最終巻は下記の記述で始まる。/昭和二十年一月一日、東京の元旦は空襲警報で明けた。/ ぼくのように空襲によって黒く汚れたビル等を観て育った世代は、敗戦がつい先日だったような気分に陥る。戦争とは何のために行われるのか。祖国の発展の為か。国民生活を豊かにする為か。そんなことはあり得ない。戦勝国の米国でさえ国民全体は貧しくなったとしか云えない。戦争なんてものは政治家や軍人の自己満足の為に行われるのである。そして負ければ、部下たちが能無しだったと云えばそれで済む。泣くのは国民の大半を占める庶民だけである。
2019/03/07
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