七つの街道 (中公文庫)
七つの街道 (中公文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
お気に入りさんの感想を読んで手に取りました。街道物は好きで司馬遼太郎の街道をゆくは何度も読んでいます。井伏さんのこの本ではどちらかというと紀行的なものというよりもその街道の歴史的な文献を読んでその土地での役割を地元の住民などに確認して一つ一つの物語にしています。三浦哲郎さんの巻末エッセイも楽しめました。
2019/11/07
ビイーン
古き良き昭和30年代の旧街道の面影は長閑で心地よい。街道の旅の合間に井伏氏の好きな渓流釣りも描かれる。楽しい釣りの後、鑑札が無いのを番人に見つかって1年分の入漁料を払わされるのだが、こういう井伏鱒二の俗っぽいところが私は好きだ。
2021/06/28
しんこい
井伏版街道をゆく、と言いたくなるが昭和32年ならこっちが先か。井伏氏も歴史を紐解き義経や農民一揆について語ったり調べたりするが、歴史は歴史で、見ているのは現在だな。篠山はまだひなびていたわか、どももでこぼこ道だらけではある。
2019/09/08
さっと
古くは新潮文庫から出ていて、私は古本屋でも井伏鱒二の棚を惜しみなく探索する身でありながらもついに見つけることができなかったので復刊はうれしい限り。ますじいの肖像はいかにも好々爺然としたもので文体もそんな雰囲気で個人的には親しみやすい。本書も「旅に出たいために旅行記を書くことにした」というところからして自然体で良い。街道の風景を見れば、魚の贓物の薬品工場から出る臭気にあてられた新婚旅行の若いカップルを見て「彼らは生涯にこんなに楽しい思いで鼻をつまむことはないだろう」とくる。
2020/06/06
田中峰和
旅番組を観る愉しみは、地元の人が話すお国自慢。テレビが普及する前、井伏鱒二が旅行記にも地方ごとに住人の特長が出ていて楽しめる。京都から出発する近江路編では、旅館に向かうときのタクシー運転手との会話がいかにも京都人らしい。老舗旅館のはずなのに、知らない運転手に地元出身かと尋ねられたことにカチンときたのか、「京都の生まれどす」と答える運転手。ようやくたどり着いた旅館の前で、「ちっこい家やな」と悔しがる。雄琴の旅館組合が鴨に葱を背負わせて放鳥したが、大阪に比べ京都人は見向きもしなかったらしい。これも京都らしい。
2019/05/21
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