富士日記(中)-新版 (中公文庫 た 15-11)
富士日記(中)-新版 (中公文庫 た 15-11) / 感想・レビュー
ちゃちゃ
もう、病みつきになりそうだ。上巻に続いて中巻は、昭和41年10月から44年6月までの日記。山荘暮らしにも馴染んできたためか、庭の草木や小動物など、富士山麓の厳しくも美しい自然の描写が増える。けれど、そこには愛犬ポコの姿はない。わずか6歳で突然の死。山荘の庭の片隅に埋葬。周囲に響きわたるほどの号泣。しかし、感傷に溺れるような記述は見当たらない。自責の念を深く心に沈ませながら、「ポコ、早く土の中で腐っておしまい」。この感覚が魅力的なのだ。対象に寄りかからず、ある程度の距離を持って愛おしむ。その潔さが、いい。
2022/06/30
mayumi
この巻で愛犬ポコが死ぬ。わたしはてっきり病気て死んじゃうのかなと思ってたんだけど、飼い主の不注意による事故死であることが判明。東京から富士に帰る車のトランクに籠に入れたポコを入れていた。ポコは籠の蓋を頭で押し上げ首を出した。車が揺れるたびに、無理に押し上げられた蓋はポコの首を絞めつけ、引っ込めることが出来なかったポコは死んでしまった。昭和42年。犬の扱いがぞんざいだった時代とはいえ、何でトランク?せめて後部座席に置いてあげなよ!本人はちょっとしたペットロスになって泣いてたけど、愛犬家としては許せん。
2021/05/14
スイ
何なのこの面白さは?! 上巻があまりに面白かったので、トーンダウンするかな…とも思っていたのだけど、とんでもない。 ページの中に引きずり込まれて、読後も私の一部は戻れずに夏の山をさまよっているような気がする。
2023/11/06
更夜
電子書籍で買いなおして、電車の待ち時間や昼休みといった隙間時間に読み続けていた中巻が終わりました。もう『富士日記』は何度読んだかわかりませんし、何度読んでも新鮮な発見があります。昭和40年前後に車を運転する百合子さんの運転についての考え方が今となっては共感しきり。本当に運転しない人は勝手な事言うだけなんですよね。三食の献立も興味深く。毎朝同じの私と違って、毎朝違う献立ってすごいことです。百合子さんのユーモア精神というより観察眼の鋭さを感じたのは美しい少女を「紅衛兵の美少女みたい」と書いた所。確かに!
2023/11/05
umico
別荘という場所は、非日常のなかの生活を感じる場所なのね。と思う。愛犬の死や、花子ちゃんの成長や、色んなことが通り過ぎていくなかで、とりもなおさず繰り返される、買い物と食事の記録。三度三度の食事のメニューを読んでいるとなんだか切なくなってきた。武田さんの老いと死の気配をしっかり感じるからかなぁ。人は誰しも死ぬのだけれど。もちろん百合子さんももう亡くなっているし。それでも昨日のことのように読める日記たち。
2023/09/29
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