成城だよりⅡ (中公文庫 お 2-19)
成城だよりⅡ (中公文庫 お 2-19) / 感想・レビュー
踊る猫
金井美恵子などが書く大岡昇平像から、彼のことをダンディズムに基づく節度ある人物として受け取っていた(とはいえ怒る時はきっちり怒る、と)。それはこの『成城だより』にもはっきり現れている。独特のクセのある文体も慣れてくればさほど気にならず、読書やその他の文化/ポップカルチャーから「進取」を欠かさず日々思索に励み創作活動を続けていた彼の日常が如実に伝わってくる。著者自身がどこまでエンターテイメント性を意識して書いていたのかわからないが(むろん、迎合して質を落とそうと思ったことはなかっただろう)、知的にスリリング
2023/03/19
amanon
年を経るにつれ、体力、気力、記憶力がどうしようもなく衰えていく…その現実に対峙しながらもなお、執筆活動、読書、交友などに勤しむ…戦争帰りの人は生への執着とか、胆力が戦後生まれとは根本からして違うのか?と思わせる。心不全を患いながら、甘いものや酒類への執着を断ち切れない…そういうトホホな側面も憎めない。そして何より興味深いのが埴谷雄高との対談への言及。前回読んだ際にはあまり気に留めていなかったが、この二人が同じ年だったのに驚き。そしてこの二人だからこそ語り得ることの豊饒さ貴重さに今更ながら思いをはせる…
2020/05/04
午睡
再読。20年前の記憶どおりにおもしろい。一体何がおもしろいのかと自問するに、とにかく本をよく読んでいる、その精神の明朗さに引き込まれてしまうのだと思い至る。英語、仏語もいとわず原書を読み、気になる映画があればタクシーで成城から銀座まで見に行くフットワーク。数学でゲーデルの不完全性定理が出てくると専門家についてレクチャーを受ける熱心さ。これで70歳すぎなのだ。それでいて「…レジス・ドブレなる人物のなかなかよき序文あり。はてな、どこかで聞いた名だが判然せず」などと書くのだから、つい教えてあげたくなってしまう。
2020/04/26
Inzaghico (Etsuko Oshita)
1982年1月から12月までの日記を収録。 前作でも思ったことだが、よく寝る人だ。昼寝もよくしている。だいたい朝起きて二度寝してるもんな。トシをとると寝られなくなるというが、大岡はそんなことはなかったのだろうか。もしくは眠りが浅いから長時間寝るのか。 埴谷雄高とは仲が良いのか悪いのか、しょっちゅう対談したりしているが、埴谷が壊れたレコード(って表現が古いか?)のようにずっと喋りっぱなしで同じ話を繰り返す、というくだりが何度も出てくる。さんざんな言いようなのだが、なぜか微笑ましくて笑ってしまう。
2019/09/26
はるぴょん(ひらた)
文字通り枕頭の書として寝る前にぽつりぽつりと読み、昨晩漸く読了。様々な分野の書籍を渉猟する日々が、その日その日の出来事と共に書かれていて面白い。最後の方で読書に費やした一生を振り返って、なかなか悪くないものだったと言っているのには、一読書人の端くれとして勇気づけられた。
2020/03/07
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