いい感じの石ころを拾いに (中公文庫 み 53-1)
いい感じの石ころを拾いに (中公文庫 み 53-1) / 感想・レビュー
ホークス
元本は2014年刊。好みの石ころを目指して蒐集家に教えを乞い、各地へ拾いに行く取材紀行。つげ義春の『無能の人』をまさに実践する。鉱物や宝石と違って、「石ころ」は野趣とか侘び寂びに通じる。「いい感じの」という条件も、自分との対話が求められる。いつものへっぽこ調の中に、幸福とは何かを探す真剣さが見えて味わい深い。種村季弘氏がエッセイで書いた「拾ってきた小石を手の中で握りしめると気が楽になる。石は何でもない石に限る」という一節は私も覚えていた。石を拾う趣味は侮れない。本書を手がかりに始めるのも良いかもしれない。
2021/10/02
saga
久しぶりに宮田さん。いつもの宮田節は少ない代わりに、石ころ拾いの情熱と葛藤が伝わってくる。面白かったが、石ころ拾いをしようとは思わなかった。著者のように、その筋には有名な場所で拾うとはまるのだろうか? 水石の専門家を訪ねたくだりは、何だか最後まで話がかみ合っていなかったな~。専門家(?)の山田氏、久世氏、渡辺氏、石ころ拾いに同行した人に影響を受けながら、「いい感じ」の模索はこれからも続きそうだ。解説の武田氏曰く「この本に意味があるかと問えば、もしかしたら、ないんじゃないか」がとても印象的。
2024/06/24
booklight
石っていいなぁ。手に持ってよし、眺めてよしのいい感じの石ころを探しに津々うりゃうりゃ。鉱石でも水石でもない「いい感じ」に自問自答しながら専門家やコレクターにもインタビュー。自分なりのアバウトな感覚だけの「いい感じ」を探求し、気づけば洗練されてしまう経過も面白い。写真をみても「いい感じ」と共感。静御前がはまっていく様子も興味深い。自分の身の回りにも石が増えていっている。草花を見る目も同じと最近気づく。その不思議な色や形にまず心を惹かれ、なぜそうなっているかの奥深さも面白い。石はさらに手で触れるのがいい。
2020/06/20
@nk
いい感じの石ころを拾うなんて、ワンダーである。「いい感じ」の定義などは結局、著者がいきついたように、可変でOKなのだ。感ずるままに、ただただ琴線に触れるものを探す。これって生きていく上でも大事なことではないか、なんて思いながらも、それ以上に掲載されている石の写真のなかに自分の気に入るものがないかを探してしまう。そして石拾いに行きたいと思う。著者曰く、何人たりとも石の魅力には抗えない、とのこと。ほんとにそうなのかもしれない。それにしても著者の文態がとても好ましい。他のエッセイも手に取ってみよう。[図書館本]
2020/08/24
奏市
ちょっと前に始めたばかりの石集めのモチベーションが沸騰してしまった。2回目に過ぎないが昨日も海岸に行って拾ってきた。特に鉱物とかブランド産地にこだわる事なく、見た目(大きさ、形、色、模様等)、持った感じから本人なりの「いい感じの石ころ」を拾いに著者が全国の海岸を訪れ、写真とエッセイにまとめてある。また、何人かの石蒐集家を訪ね魅力を聞き出す。色々巡るごとに「いい感じの石ころ」の基準がぐらつき逡巡するのがいい。たいてい一緒に同行していた当時の担当編集者の「武田氏」が武田砂鉄さんだったと最後に知ってびっくり。
2022/07/17
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