佐藤春夫台湾小説集-女誡扇綺譚 (中公文庫 さ 80-1)
佐藤春夫台湾小説集-女誡扇綺譚 (中公文庫 さ 80-1) / 感想・レビュー
榊原 香織
台湾が日本の植民地だった1920年、新宮出身の文学者、佐藤春夫が2か月あまり台湾周遊。 渡航100年記念で復刊。 霧社で原住民に日本人警察一家が殺された事件の直後、現地入り。 有名な霧社事件はその10年後。 豊原(台中近く)が出てくる。胡蘆屯という古名が日本風に変えられた当時。 中国拳法の研修、歓迎会でここのレストランに2回ほど行ったことがある。
2021/08/18
Shun
佐藤春夫初読み。谷崎潤一郎と親交のあった著者は、女性を巡っての問題でも似たような所があったようです。そしてその人間関係から離れ当時植民地だった台湾へ渡り、この彷徨の経験が本作に収録した台湾を舞台とした小説に繋がっていった。日本人である作家が当時の台湾を見て聞いて書いた作品からは、異国の情緒や旅情といったものが感じられます。台湾発展の途上で、ある資本家の一族が辿った末路と言うべき栄枯盛衰の物語から一つの怪異譚が生まれ表題作のモデルとなっている。また廃墟に美女の霊という物語は民族的に共感できるテーマだそうな。
2023/05/26
ワッピー
1920年、台湾総督府統治下の訪台インスピレーションで生まれた作品集。港町の廃墟の怪奇「女誡扇綺譚」、尼寺の驟雨「鷹爪花」、車中スケッチ「蝗の大旅行」、幸薄い女の望郷「旅びと」、日本人襲撃事件ルポ「霧社」、憲兵同席の場で日本統治に批判的な台湾の文士とのスリリングな対話「殖民地の旅」、台湾原住民のタブー「魔鳥」、日本人入植者と名もない花「奇談」、あとがき「かの一夏の記」を収録。総督府から上げ膳据え膳で厚遇されているように見えるものの、読み進めるにつれて違和感が大きくなる。日本人と中国人、蕃人(原住民)との⇒
2020/10/10
あたびー
大正9年、妻の不倫、谷崎潤一郎の妻との実らぬ恋に疲れた佐藤春夫は友人が台湾の高雄に歯科を開業したのに誘われて日本が占領する台湾へ渡る。そこで見聞きしたことを帰国後に纏めた紀行文及び小説。没落した豪商の廃邸を舞台にした「女誡扇綺譚」はフィクションと思われるが、土地で見聞きしたことを下敷きに舞台建てなどは事実に忠実に出来上がっているらしい。話者はある程度の推理を働かせてこの話を締め括っているが、一種のリドル・ストーリーにもなっていて、読者が想像を巡らせることが出来る。(続く)
2020/10/23
えも
久しぶりの大正文学▼1920年(百年前!)、20代の佐藤春夫による台湾への傷心旅行?。当時の情勢がムンムンと伝わってきます▼旧仮名旧漢字ではないのが残念ですが、文体の風情はやはり大正。「悉く」とか、何て読むんだったか考えちゃいましたよ♪
2021/08/31
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