新装版-五郎治殿御始末 (中公文庫 あ 59-8)
新装版-五郎治殿御始末 (中公文庫 あ 59-8) / 感想・レビュー
ケンイチミズバ
乱暴な維新に戸惑うばかりの武家、時代に翻弄されることに慣れっこな町人のしたたかさ、次郎さんはこの時代の人かもと思ってしまうほど創作にリアルを感じる。道中で襲って来た追剥もかつてはどこかの藩士。宿場でまとわりついてきた飯盛女も武家の出だと分かった。上野に籠り最後の戦いに挑むも敗北し小兵衛はそれを区切りに商人となり立身したが、凋落した同胞にも生きねばという共感と優しさがある。丁稚たちに読み書きを教えるのもそれが役立つ世の中を見据えている。彼が息子同然の丁稚、新太を連れて椿寺を訪れたのも一つの覚悟のためでした。
2022/09/22
優希
全6編の短編に人生と時代に始末をつけた武士たちが描かれていました。明治維新前後の侍たちは時代についていけなかったのでしょうね。切ないです。
2023/04/14
ぽろん
明治維新という時代に翻弄された武士達の短編集。さすが、一話一話、読み応えがあった。それぞれの武士の仕舞い方に胸があつくなりました。
2021/08/27
baba
明治維新で武士階級が無くなり、時代の変化にどう対処したのか、興味深い。特に表題の「五郎治殿御始末」は実に気持ちの良い始末振り。巻末の「柘榴坂の仇討」の映画化に伴う中村吉右衛門との対談や磯田道史の解説もご褒美のように嬉しい。
2024/03/31
ぶんぶん
【図書館】安定に惹かれ「浅田次郎」を選んでしまう。 全六編の幕末物、といってもドンパチは無し。 急激に変化する社会の中で、如何に処世を保つか、幕臣の辛さがヒシヒシと感じられる。 「柘榴坂の仇討」が敵討ちを時勢により「殺人罪」になってしまうそんな時代に、何とか折り合いを求める話。 井伊直弼を打ち取られた御駕籠回りの近習・金吾は十三年仇を探して、やっと逢えた。 それを止めて恋女房と生きる決心をする場面が良い。 五郎冶も大事な「孫」に語りかける言葉が優しい。 御涙頂戴である、良いなあ、浅田文学。
2021/12/09
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