静謐-北杜夫自選短篇集 (中公文庫 き 6-19)
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静謐-北杜夫自選短篇集 (中公文庫 き 6-19) / 感想・レビュー
佐島楓
北杜夫の純文学作品集。収録されている作品は霧のモチーフに代表されるように、夢と現実のあわいを漂っているような、少し酔っているような感じが「明晰に」書かれているのが面白い。父・斎藤茂吉を描写した「死」という随筆も初めて読んだが、医者が医者である父の遺体と対面するとこういう視点になるのか、という複雑な気持ちになった。北先生が動物学者を志していたこともここで初めて知った。
2021/08/23
tomi
北杜夫が生前に編んだ短篇集(81年刊)の文庫化で、初期の純文学作品10篇が収録されている。いずれも高校生の頃から20代前半に新潮文庫版で読んでいるので、実に久々の再読。私小説からSF、幻想小説と幅が広い。台湾奥地へ昆虫採集に行った男に自然の暴力が容赦なく襲いかかる。迫真の描写が印象的な「谿間にて」、理不尽なしきたりに抗おうとする火星人の物語「不倫」、閉ざされた静かな余生を送る老婆の内面の幻想世界を鮮烈に描いた「静謐」が特に良い。
2023/01/23
たつや
北杜夫は「楡家の人びと」がすこぶる面白かったが、この自薦短編集は趣きが違い、独特の世界が展開されているが、味わい深くもあるので、北杜夫の世界として受け入れつつ、愉しんだ。
2023/11/17
JVSTINVS
篠田一士が解説で書いているようにリーダブルなのだが、それと同時に奇妙な味がする。かなり奇妙な味がして、不穏な空気が流れ、なにかの幻視がされている。それが明快なことばで描かれるのは一層不気味である。「河口にて」「黄いろい船」が個人的にはお気に入りだろうか。
2023/09/30
kikizo
北杜夫の作品で一番最初に読んだのが「船乗りクプクプの冒険」そこから一気に嵌り、ほぼ全作読んだ。ただ、当時中学生だった僕には、理解できない作品が多かったような気がする。今改めて自選短編集を読むと、あのころとは全く違う印象を持った。やっぱり北杜夫は素晴らしい!また他の書も読み直そうかな。
2021/10/23
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