二魂一体の友 (中公文庫 は 28-2)
二魂一体の友 (中公文庫 は 28-2) / 感想・レビュー
ロビン
朔太郎と犀星、性格も才能も全く異なる二人の詩人の間に結ばれた生涯の友情の、熱くもほのぼのした調べを聴く。犀星が朔太郎のことを、朔太郎が犀星のことを書いた文章を集めて編まれており、加えて巻末にそれぞれの息女による対談を付す。毎日のように共に飲み歩いた時期もありつつべたべたしているわけではなく、お互いをくそみそに言い合ったり、あいつはおれを全然理解してないとか言いながら、互いに相手の美点を率直に認めてはっきり「親友」と明言していて、凄く素敵な関係であり、羨ましいし、微笑ましい。二人とも真剣で正直だなあと思う。
2024/09/12
冬見
朔太郎と犀星の交流を描いた随筆や互いの詩集に寄せた序文などを集成。巻末には萩原葉子と室生朝子の対談を収録。読んだことがあるものもあったが、彼らの交流を一気にまとめて読むことができて良い。欲を言えば『我友』の詩が全収録(どさくさに紛れて惣之助のぶんも含めて)されいればなあ、なんて。でも紙の本で「供物」が読めたのは嬉しい。性質の違う二人が生涯にわたってここまで強い結びついていた理由がわかったような、わからないような。読めば読むほど不思議で、納得のゆく二人。
2021/11/20
駄目男
朔太郎は言う。犀星の書斎は明窓浄机で塵ひとつないと。 然るに自分の居間ときたら、原稿用紙と鼻紙が一杯に散らばり、その上、煙草の吸殻が座敷中に捨ててある。犀星のところに来ると、いつもゴミダメから座敷に招待されたような気がすると。更に。「いいね、蛙が鳴いてるじゃないか」と言った。すると急に犀星が欣然として、さも意を得たように言った。「君にも風流の情緒がわかるか、なかなか話せるぞ」 この二人は大の親友なくせに趣味、趣向が合わず拠ると触ると喧嘩ばかりして、時に犀星はぷいっと反転し帰ってしまうこともある。
2021/11/09
ハルト
読了:◎ 詩人・萩原朔太郎と室生犀星の、互いの人柄、作品について語るエッセイ、詩集の序文等が収録してある。「二魂一体の友」とあるように、互いに真反対だからこそ通じあえた友情が、この本からは立ち上ってくる。詩を通して培われ、赤裸々に心を明かしても壊れなかった友情は、二人がよきライバルであり、またブロマンス的なものをすら匂わせる。こうまで厚い友情が二人の間にはあったのかと、初めて知った。芥川龍之介の名前もちらほらと出てきたりして、おもしろく読めた。
2021/10/19
月
二魂一体の友。さびしき友、砂丘を登る人、それぞれの詩集に寄せて、詩への告別・・。殆ど既読の作品たちだったが、纏めて読む構成が一つの作品へと、また新たに連なり(生まれ変わり)、一連のストーリー(流れ)となり、泣けてくる。文豪同志の繋がりと言えば、春夫と大學、直哉と実篤、康成と利一など・・想い浮かぶも、私にとってやはり犀星と朔太郎は、いろんな意味で最強の繋がり(二人)である。私も既読本の「我友」をもう一度読みたくなってきた。久しぶりの犀星。
2022/06/21
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