楠木正成(上)-新装版 (中公文庫 き 17-16)
楠木正成(上)-新装版 (中公文庫 き 17-16) / 感想・レビュー
優希
楠木正成の「悪」の一面を活写していました。その筆致はハードボイルド色が強く感じられます。屈指の天才と称された正成の真実を追い求めたいと思いました。下巻も読みます。
2022/07/17
どぶねずみ
楠木正成は悪党か、英雄か。そんな問いが連載中の新聞小説を読んでいる最中に脳内をぐるぐると駆け巡る。そんな疑問を解消できるかと思って選んでみた人物小説。上巻だけではまだ解消されるか不明。幕府が腐っていくから自分で国を作ろうとした。いつの時代だって組織が荒んでいけば、民がもがき苦しみ、誰かが立ち上がろうとする。それがこの時代の楠木正成だったのだろうか。下巻でどんなことを成し遂げたのか、果たしてそれが社会からどんな評価を受けるのか。下巻へ。
2023/09/07
Y2K☮
創作要素はある。だが後の世から道徳的バイアスを施されて美化されがちな楠木正成の「悪党」な本性を描く筆致に嘘の匂いはしない。嘘と虚構は同じではない。石原慎太郎「天才」みたいな憑依性すら感じた。保国安身。公のために戦うことが同時に我が身を救うなら動く。それが正解。国や会社に持ち上げられ、使い捨てにされるのは馬鹿げている。民の生活を知りたいと泥にまみれるセレブへの共感とひややかな視線の共存も身に覚えがある。あと偉い人は下の者を戦わせて死なせる前にまず自分が武器を取れという声は、まさに現社会情勢に通ずる。下巻へ。
2022/05/24
フミ
昭和世代の「正成→後醍醐帝の忠臣」という印象で読むと、戸惑いそうな作品でした。あくまで「悪党(武装した商工業者)」が、武士(武装農民)の支配する社会に、どう抗うか~で悩み、伊賀や播磨の悪党の姿を横目に商売を広げ、人脈を作り、自衛の兵を整えているうちに「とある皇族」に親しみを覚え…という流れで、後醍醐天皇は「無能な取り巻きに囲まれながら謀議している」扱いです。血統崇拝的な価値観が薄い、北方先生のオリジナル性が強い印象ですが「人物の会話や思考から世界が見えてくる」と、感情移入度が高く、面白い作品かと思います。
2022/09/28
coldsurgeon
軍事的天才と称さられた悪党・武将の楠木正成の物語である。悪党という定義が歴史的にはあいまいだが、既存の社会制度に不満を抱き、それをそれぞれの利に基づいて壊そうとする輩であるかもしれない。社会を平穏に保つためには、政事は欠かせぬが、常に政を正す力が働かなくてはならない。それが働かなくなったから、生き延びるための方便として悪党が生まれたと思う。倒幕を計画する朝廷は、無視の奉公を求め、机上の空論に明け暮れた居たようだが、正成は「無私というのは、人の行動を飾る言葉」と切り捨て、悪党としての利を求めていたのだが。
2022/12/06
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