中央線小説傑作選 (中公文庫 な 78-1)
中央線小説傑作選 (中公文庫 な 78-1) / 感想・レビュー
HANA
中央線界隈を舞台とした小説のアンソロジー。自分は中央線には五六度乗った事があるくらいなのだが、それでもそこにある中野や高円寺、荻窪といった地名には妙に惹かれるものがある。内容は名だたる文豪が揃っていて、どれも外れ無しの一気読み。主に昭和初期から中期の作品ばかりなのだが、それも妙に中央線のイメージに合っている気がする。麹町の百鬼園先生から始まり、阿佐ヶ谷や吉祥寺等を経て北多摩の松本清張まで、東京からの駅順に並んでいるのも面白いところ。数多の作家たちの文章と共に、西東京の地霊までも堪能できる一冊でした。
2022/10/22
Kaz
首都圏には様々な鉄道路線があるが、最も個性的な路線として名高い中央線の沿線を舞台にした短編集。太宰治、五木寛之、松本清張、井伏鱒二などの有名どころから、知る人ぞ知る作家まで様々なジャンルの作品が目白押しで飽きずに読める。無機質で人工的で時に非人間的な顔を持つ東京という都市に、相反する価値観を体現したかのような匂いを持つ中央線は貴重なオアシス。一時期、同僚と「中央線の会」というの会を開催していたけど、こうした会が成立するのは中央線ならではといえよう。
2022/04/09
蒐
内田百閒、五木寛之、小沼丹、井伏鱒二、上林暁、原民喜、太宰治、吉村昭、尾辻克彦、黒井千次、松本清張。11人の文豪たち(現役の方もいるのでこの呼称が正しいかはさておき)が描く「中央線」小説。私自身、人生の大半を中央線沿いで過ごしてきたので、生活感あふれる文章の中に沿線の風景がそっと垣間見えると嬉しくなる。首都のど真ん中を走ってる割に、どこかローカルさも感じさせる中央線。そんな魅力を再発見しつつ、なんだかんだで太宰治と松本清張の犯罪小説には心躍った。よく利用する「たまらん坂」の名前の由来を追う話も面白かった。
2022/07/28
ロア
本の表紙が中央線カラー(*´ω`*)
2022/11/20
Inzaghico (Etsuko Oshita)
松本清張の「新開地の作品」(1969年)は、まさに昭和40年代の作品だ。おそらく中野が舞台となっているのだろうが、当時、農地がどんどん住宅地に変わり、それとともに住民が変わっていく様子が、清張が描く犯罪を引き立てる。犯人と犯行動機は相変わらず昭和らしくドロドロしていて、対照的だ。五木寛之の「こがね虫たちの夜」に売血の話が出てきて、かつてこの作品を読んで売血制度があったのを知った、というのを思い出したり、黒井千次の「たまらん坂」にミステリのようなわくわくを覚えたり。
2022/04/05
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