カロや-愛猫作品集 (中公文庫 う 37-3)
カロや-愛猫作品集 (中公文庫 う 37-3) / 感想・レビュー
TSUBASA
梅崎春夫が飼っていた猫カロ。カロをモデルにしたかどうか、猫を取り扱った作品集。『猫の話』ではある若者の部屋に迷い込んできた猫が往来で車に轢かれ、何とはなしに愛着を持っていた若者が涙する。かと思いきや『カロ』では何とはなしに日常的にカロを猫叩きでぶったたくというちょっと普通の人の同情を得るどころか引かれるような屈折した猫への想いが描かれる。どうしても『ノラや』を思い出すけど、本作品集のタイトルを寄せただけなのね。作品的にはこちらに収められた作品の方が先との由。しかしこれは猫好きに見せたら激怒するだろうなぁ。
2024/05/15
かもすぱ
猫がテーマの短編集。サブタイトルに「愛猫作品集」とあるが、猫かわいいね魅力的だねという話はほぼない。飼い猫カロについての小説・随筆が入り乱れて、どこまでが小説でどこまでが随筆かわからない構造。戦後すぐという時代を加味してもちょっと猫の扱いが悪い。トムとジェリーはネズミが猫をやっつけるからコミカルなのであって、人間の大人が猫を叩いたらコミカルじゃなくなるんだなと思った。自分は巻頭の『猫の話』が文体にキレのあるように感じて一番好きだった。飼い猫が自動車に轢かれて毛皮ばかりぺったんこになっていく話...。
2022/06/06
SAT(M)
冒頭の「猫の話」、多くの人が「なんでこんな残酷な小説を書いたんだろう」という感想を抱くと思うのですが、その後のエッセイを読んでみると納得。作者自身の猫に対するサディスティックな愛情の現れだったんだと。内田百閒を光の愛猫家だとすると、愛憎併せ持つ梅崎は闇の愛猫家といったところ。さっきのエッセイで書いてた猫エピソードを、こっちの小説で使ったんだなと思わせておいて、「私小説の文体で書くと読者は作者自身の話だと思い込む。この技法は私の専売特許」と煙まいてくる。色々な意味でへそ曲がりな作者ですが、僕は好きです。
2023/05/28
Moeko Matsuda
ひょんなことで知って、一気読みした。発表当時、愛猫家から投書されまくったという問題作を含む「愛猫作品集」ちょっとクエスチョンマークがつくところはあるけれども…いかんせんあまりにも酷い描写もあるのでね、それも理解できるなと思いつつ。ただ、なんとなく、なんとなくなんだけど、本当にカロを好きだったからこそとても憎らしかった、というそんな思いも、なんとなく伝ってきたりするのだ。とてつもない愛妻家だったという梅崎春生。きっと、自分の家族になった動物たちに対しても愛情深かったんじゃないかな、と、想像しています。
2023/01/04
三田典
梅崎春生の猫に関わる話の作品集。 一部フィクションであると注意を入れているが、なんだかリアルな気もする。後は猫や犬のエスに振り回される様が笑いを誘う。
2024/06/16
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