川端康成異相短篇集 (中公文庫 か 30-7)
川端康成異相短篇集 (中公文庫 か 30-7) / 感想・レビュー
buchipanda3
川端康成全集から"異相"をテーマとして選ばれた作品集。ここで言う異相は幻想的というより、通常の認識から外れた目線で世の様相を捉えることで現実における歪みを際立たせているものという感じだろうか。冒頭の「心中」からしてその異様さにぞわりとなるが、世の旧弊な不条理の現実性の方が感情に触れた気がする。「白い満月」も死という不可解だが現実的なものへの認知の不安に揺れる。「死体紹介人」に至っては奇異な語りの平然ぶりに感覚が別次元へ飛んだかのよう。端麗な短篇群に心の奥を翻弄されたが、この味わいは小説だからこそと思えた。
2022/07/10
佐島楓
生と死との境界線が非常にあいまいな作品が多い。死んだはずの人が目の前に現れても、登場人物はそれを自然と受け入れている。その態度が川端の死者に対するスタンスだったのだろうか。これらの作品に限らないが、妙に突き放した冷たい視点と、女性に対する執着との温度差も気になった。
2022/07/07
HANA
生と死は普通越えることの出来ない境界で隔てられているが、本書に収められた短編はそれがあたかも薄いガラス戸一枚であるかのように隔てられるべき両者は軽々と交歓している。その為どの話も硝子片のような明るさ透明さを感じさせながらも、その中に濃厚に死の気配を漂わせている。代表的なものが幽明境を異にした友人と話す「地獄」だろうけど、色々と象徴的な「心中」や黙示録的な幻覚を示す「赤い喪服」等、兎角死が漂っている。随筆も収録されているが、特に巻末の「眠り薬」とかは、著者の最後を暗示しているかのようで妙に怖いものであった。
2022/09/07
Vakira
18編の異相短編集。異相って?御伽噺や幻想小説とは違う。現実からちょっとばかしズレるって、こと?川端さんはこれで3冊目。病気とか自殺とか、簡単に人が亡くなってしまう話が多い感じ。書かれてた時期が昭和初期なのでそんな環境だったのか?今回の収穫は「死体紹介人」。若くして肺の病気で夭逝してしまった美しい女性。身寄りがないので大学の解剖教材へ。その前に生まれたままの姿を写真に残す。なんかネクロフィリア?更にその女性の妹までも。そんなんあり?ちょっと普通じゃありません。多分この感覚が「眠れる美女」となるのでしょう。
2022/10/17
tonpie
このタイトルは川端康成を「異相」の観点で捉え直すという意図だと思うが、川端の初心者である自分にとっては、この「異相」こそ川端康成の「実相」に見える。 ●「心中」は萩原朔太郎的なイメージ。散文詩のように短いけれど、異様な迫力がある。●「白い満月」は、「結核療養」の「温泉もの」で、二組の姉妹を置き、写実的な描写が続くので安心していると、「私」と姉妹の父親が違う=天上の(死後の)親のギリシャ神話的な不倫問題や、お伽噺のような決闘騒ぎと妹の自殺、女中の霊視などの事件が続く。↓
2023/07/27
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