其の一日-増補新版 (中公文庫 も 26-7)
其の一日-増補新版 (中公文庫 も 26-7) / 感想・レビュー
けやき
「首鼠両端」を加えた増補新版。他は再読。主人公の人生のうちの重要な1日を描く。やはり井伊直弼の密偵となった可寿江を描いた「釜中の魚」が1番よかった。新たに書き下ろされた赤穂浪士討ち入りの日の上杉綱憲を描いた「首鼠両端」もよかった。
2023/06/06
ぷく
江戸に生きる人々にも、令和を生きる私たちにも、平等に与えられる一日という時間。身分も性別も貧富の差も無関係な時間の単位。長いようで短い、短いようで長い。その流れの中でいかに生きたかを問う短篇集。腹に据えかねることもあろう、涙に暮れることもあろう、ままならぬ人生を、それでも必死に生き抜く力を目の当たりにして大いに勇気づけられた。時代に翻弄されながらも自らが選んだ道に迷いなどない。清々しさと共に顔をあげる彼らの決意が眩しい。増補新版ということで、最後に収められている赤穂浪士討ち入りの『首鼠両端』を挙げる。
2023/06/20
ひさか
小説現代2002年5月号立つ鳥、10月号蛙、8月号小の虫、11月号釜中の魚、の4つの短編を2005年12月講談社文庫刊。書き下ろしの首鼠両端を加えて2023年5月増補新版として中公文庫刊。歴史の中に実際にあった一日を書いたということだが、蛙などは果たしてそうなのか?と思ってしまう。緊迫感のある話が多く楽しめた。首鼠両端は赤穂浪士物でさすがにどう料理してもありふれ感からは出られないんじゃないかと思うが、執念のようなチャレンジ精神に拍手。
2023/07/30
ヨノスケ
4つの短編集。どの話も実在の歴史上の人物に関わった人々の重要な一日を描いたものである。私にとって初めて読む作家さんで、時代ものの面白さが存分に味わえた。幕末期の頃の変革期に翻弄される人達の生き方は、いつ読んでも悲哀があって心に響く作品が多く、本作も例外ではなかった。
2023/04/29
fukufuku
再読。 新井白石に糾弾された勘定奉行荻原重秀が罷免になる前日、なんの五千石君と寝よの事件翌日の藤枝紀行の妻、恋川春町の息子が父の筆業を知った日、奸婦にあらずの可寿江の桜田門外の変の前日、赤穂浪士討ち入りの翌朝の上杉綱憲の右往左往。 以前単行本で読んだ時は最終話は収録されていなかったはず。それまでのシリアス路線ではなくクスッとする話で締めくくられている。
2023/10/03
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