象・滝への新しい小径 THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER〈6〉
象・滝への新しい小径 THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER〈6〉 / 感想・レビュー
春ドーナツ
チェーホフの小説を詩にしたもの。ナージャ、桃色の頬(*)彼女の瞳は/とびっきり凄い何かへの期待の涙に輝き、輪を描く/ように踊り、白いドレスは大きく波打ってその肌色の/靴下に包まれたほっそりとした美しい脚をちらりと/かいま見せる。ワーリャ、満足の笑みを浮かべて、ポドゴーリンの/腕を取り、いかにも意味ありげな顔で、声をひそめて言う、「ミーシャ、あなたは幸せから走り去ってはいけないのよ。たっぷりとあるうちに/それを思いきり楽しみなさい。やがてどれだけ追いかけても/それに追いつけないという日がやってくるのだから」
2019/06/06
メセニ
最晩年の短編集と遺作となった詩集を収録。創作されたのが晩年であることを知っているからか、作品の中の人生の何気ない不安や混乱をどうしても”暗い予感”のように読んでしまう。本人にしてみればそれは老いていくことへの恐れや、あるいは破綻の気配を描いただけかもしれない。死期を悟った後に書かれたものについて言えば、「使い走り」などはチェーホフの今際の際に自らを重ね合わせ、文字通り心身を削っての創作だったかと思うと胸が詰まる。詩集の方でも自作の間にチェーホフの言葉を置くなど、時代の異なる作家への切実な共鳴がうかがえる。
2017/08/28
nappa
「引越し」と「親密さ」が好き。
2018/04/14
訪問者
最後の短編集「象」では、「象」と「使い走り」が傑作。「象」の絶望的な生活状況の中でも人生に希望を持ち続ける主人公の姿はカーヴァーの人生観や強さを感じさせる。死を主題にした「使い走り」も忘れがたい。 最後の詩集「滝への新しい小径」も素晴らしい。『「我々は痛手をこうむりました。でもまだ作戦行動をつづけることは可能です」とスポックがカーク船長に告げる。』『ハイドンの104の交響曲のことを思い出してほしい。全部が全部傑作というのではない。でもとにかく104あるのだ。』
2016/10/09
gender
装丁の綺麗なレイモンドカーヴァー全集の中の一冊。ふとした人生の瞬間になんとなく後ろを振り返りたい時なんかに手元に置いておきたいような短編集。何か意味のあるようで無いような、何が言いたいのかわからないけど、たぶん人生のどこかで味わったことのあるようなじんわりと不確かな既視感みたいなものを味わえるのが彼の作品だと思う。何か具体的な答えやストーリーを求める人に向かないけど、響く人には響くのではないだろうか。確か騎士団長殺しの主人公の妹が小径という名前だったな。
2021/09/23
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