武田百合子全作品 (1) 富士日記 (上)
武田百合子全作品 (1) 富士日記 (上) / 感想・レビュー
どんぐり
没後25年、武田百合子の単行本未収録エッセイ集『あの頃』が出版された。この新刊を読む前に、1977年刊行の『富士日記』を再読。初版は上巻が緑、下巻が赤の装丁で、副題に「不二小大居百花庵日記」とある。ずいぶん前に古本屋に売り払ってしまったので、手元にいまこの本はない。愛蔵本にとっておくきだった、と少し悔いながら作品集のほうで読んだ。上巻は、昭和39年7月4日~41年9月26日までの富士山小屋での四季の移ろい、友人との交流、生活、食事などの身辺雑感。巻末には中村真一郎の「富士日記に寄せて」の解説がある。このエ
2017/06/06
eritoku
富士山麓での別荘暮らしを綴った日記。ひたすら食べたものや買ったもの、会話の内容が書き連ねてある。人々は馴れ馴れしくあけすけで、やたらとものをあげたり、ご飯をご馳走になったり、車はしょっちゅう故障するし事故はしょっちゅう起きるし、人はしょっちゅう死ぬ。お酒飲んでも平気で運転するし、富士五湖は泳げる。献立は超フリーダム。ぶどうパンととろろとかw。だけどその空気感がどうしようもなく懐かしく、羨ましい。古き良き時代の匂いが楽しめる、すごく楽しい一冊。
2014/08/02
くまごろー
文化人類学的に価値のある資料だよな、と思いつつ。記録しなければそのまま誰の記憶に残るようなこともない取り止めのない出来事も、積み重ねれば歴史になる。自分も拙いながらも文章を書いているので、拙いながらも続けようと思った。
2010/09/05
紫電改
著者の三作目、相変わらずの天真爛漫な可愛い女性だな。どうということのない日常風景なんだけどその視点というか感性が好き。毎食の記録と家計簿があきもせず羅列されているのが興味深いし、地元の人たちとの交流もなかなか良いと思った。中・下巻も間をおいて読みたい。
2023/04/18
冬薔薇
昭和39年から41年の山の日記。東京と富士山の裾野を往復してせっせと住処を居心地良くしていく。その過程で地元の人々との交流が細やかに描かれる。買い物の記録は当時のモノの値段がわかり、三度の食事の記録もこまめに書いている。時には意見が合わずキレることもあり気さくで活動的。「うちのワラビはとっちゃダメ、よそのをとって食べる、うちのをとったら承知しないよ」ととりもしないうちに泰淳におどすような目つきをして言う。なんて笑ってしまった。自由でユーモアがあって面白く読ませる。庭の草花、山の自然が素晴らしい。
2016/06/15
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