ファイアズ: 炎 (村上春樹翻訳ライブラリー c- 5)
ファイアズ: 炎 (村上春樹翻訳ライブラリー c- 5) / 感想・レビュー
kazi
エッセイに詩に短編とジャンルバラバラで一見とっ散らかったように見えるが、内容は質が高く読み手を唸らせます。特に冒頭のエッセイ、「父の肖像」「書くことについて」「ファイアズ(炎)」「ジョン・ガードナー、教師としての作家」は無駄のない硬質な文体の中に、カーヴァーの“書く”という仕事に対する誠実さが伺えて感銘を受けました。『結局のところ、ベストを尽くしたという満足感、精一杯働いたというあかし、我々が墓の中まで持っていけるのはそれだけである』確かに、どんな仕事でもそうだよね。その境地に達するのは容易ではないぞ。
2022/02/26
くさてる
わたしにとってのカーヴァーは「足元に流れる深い川」の一作に尽きるので(それ以外にも好きな短篇はあるものの)、それが収録されているこの一冊はやはり素晴らしい。
2016/11/23
MO
他の本にも重複して収録されている短編もありますが、何度読んでも味わい深い。本人も作品に手を入れるようで、以前読んだものと印象が違うのがあった。「足もとに流れる深い川」はこの本のが好き。子供の頃に感じた言葉にならない受け入れがたさ、と言う感情を思い出した。「アイザック・ディネーセンはこういった。私は、希望もなく絶望もなく、毎日ちょっとづつ書きます、と。いつか私はその言葉を小さなカードに書いて、机の横の壁に貼っておこうと思う。」
2022/10/28
solaris
短編とエッセイ。エッセイは「書くこと」や「ジョン・ガードナー、教師としての作家」と表題作が読み応えあり。作家としてのカーヴァーの本音が聞ける。二十歳になる前に結婚し、二人の子を授かるが、毎日の生活の糧を得るための仕事と子育てに追われる。そんな日常が、私が日曜日にコインランドリーにいるときに悟らせる。本物の作家が心の中に持つ創造のファイアズ(炎)を、この忌々しい日常が奪ってしまった。ジョン・ガードナーはカーヴァーの創作学科、大学時代の恩師。適切な完璧な文章を書くことが作家の唯一の仕事。なんだか泣けてきた。
2021/05/16
りん
「間もなく私の人生はまたもや向きを変え、急激に方向転換し、やがて引き込み支線の中に入って停止してしまった。」
2017/09/29
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