グレ-ト・ギャツビ- (村上春樹翻訳ライブラリー f- 2)
グレ-ト・ギャツビ- (村上春樹翻訳ライブラリー f- 2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
村上春樹は「訳者あとがき」で、本書の翻訳の基本方針として「現代の物語」にすることと語っている。訳文の文体は古さを感じさせないし、十分に現代的だ。しかし、その一方では強く時代を反映してもいる。この物語は1924年に書かれている(物語の舞台は1922年)のだが、この時期は戦間期にあたり、アメリカは平和で未曽有の好景気に湧いていた。ケープ・コッドを物語の主要な舞台にしていることも象徴的だが、これは東部の上流社会にとうとう入り込むことができなかったギャツビー(他の登場人物もまた)の華麗で、そして哀れな物語である。
2012/09/16
ちーちゃん
名作だとつくづく思います。白人至上主義、不倫、横恋慕と、登場するキャラは共感出来ない人達ばかりです。しかし、フィッツジェラルドの情景描写や心理描写は卓越していて素晴らしいです。特に最後の一節の「だからこそ我々は、前へ前へと進み続けるのだ。流れに立ち向かうボートのように、絶え間なく過去へと押し戻されながらも。」は名文だと思います。また、中盤までの豪華で華やかな雰囲気と終盤の寂れて物静かな雰囲気が、狂騒の20年代とその後の世界恐慌を暗示しているかのようです。村上春樹さんが強い影響を受けたのも納得でした。
mura_ユル活動
図書館で『愛蔵版』を借りた。1924年に書かれた物語。舞台は1922年のアメリカの東海岸、暑い夏の日。ゆっくりと時間が流れる。葛藤や人を思う気持ち、ねたみなどを台詞や所作・挙動の表現・描写に盛り込んでいる。ゆったりとした時代だからこそ、深く考えることができる。フィッツジェラルドは28歳の時に本書を刊行。私自身、翻訳というものを意識したことはなかった。翻訳者によって本の雰囲気が変わるのは当然。翻訳者村上さんは、冒頭と結末の訳に腐心したとあとがきで語っている。『君も覚えているだろう、オールド・スポート』
2013/10/31
ehirano1
何かのため、誰かのため・・・そんな想いに駆られました。
2024/04/20
ハッシー
優雅で玲瓏な文体が「黄金の20年代」を経験したアメリカの雰囲気を感じさせる。 豪華絢爛な屋敷やパーティーの描写から「永遠の繁栄」を約束された当時の裕福な暮らしぶりが窺える。しかし、作者は満ち足りた生活の中に切なさや哀しさを抱いている。富と名声を極めたギャッツビー氏は儚く脆い当時の人々の代表として描かれているのではないか。
2016/09/01
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