私たちがレイモンド・カーヴァーについて語ること (村上春樹翻訳ライブラリー m- 5)
私たちがレイモンド・カーヴァーについて語ること (村上春樹翻訳ライブラリー m- 5) / 感想・レビュー
春ドーナツ
サブリミナル効果のように、彼らの話に耳をすませていると無性に短篇集「頼むから静かにしてくれ」を読みたくなる。初めて読んだのが刊行まもない「Carver's Dozen」だった。そのときはそれほどピンと来なかったように記憶している。翻訳小説自体に慣れていなかったということもある。それがとても長い時間がかかったけれど、本書読了をもって全集収録作を洗いざらい読んだことになる。不思議だ。「カーヴァー・カントリー」というレアな写真集もチェック済みだ。カーヴァー家の人たち、メアリアンとクリスの話は新情報の宝庫だった。
2020/04/12
ぐうぐう
作家仲間、前妻、実娘が語る、レイモンド・カーヴァーの実像。極貧時代や、忌まわしき「バッド・レイモンド」時代を赤裸々に明かしていくインタビューイ達。しかしそこに、暴露的なニュアンスはほとんどない。誰もが、作家としてのカーヴァーを高く評価し、ゆえに貧困もアルコールも人格も、安易に否定することをしない。それ以前に、彼ら彼女らは全員、友人としてカーヴァーを語っている。そこから滲み出る変わらぬ情愛が、なんとも心地いい。
2011/06/30
バナナフィッシュ。
自分が死んだ後にこうやって語ってくれ人がいるだろうか。あくまでも赤の他人なのに、いつ自分と相手が出会い、そこでどんな話をし、二人はどんな財政状況で、そしてどんな作品を書いている最中で。なんか全てがいい思い出ではないにしても、心が温まる。レイ・カーヴァー。その人。
2019/08/25
あなた
絶望したときにとりあえず持って外に出かける本。ぼろぼろになっている。カーヴァーの小説は「人はそれでもなお生きていくんだ」ということがテーマになっている。どこかに置き去りにされたり、真剣に自分の死について考える夜があるだろう。でも理由もなく、とほうもなく、生きてゆかねばならない。そこになにかのまだ誰にもわからないひみつがあるから。まいにちを希望も絶望もなくちょっとずつ生きていく。未来のために。「やがて僕らはさよならを言わなくてならなかった。でも、そこまで会いに行って、本当に良かったと思っているんだよ、サム」
2021/11/06
namunamuナムちゃん
何って、今だカーヴァーの事をみな慕っていたということが驚きだ。ひとりが言った、「人は歳を取ればとるほどひとりの人と時間を綿密に過ごすことは出来なくなる。しかしそれが出来るのがカーヴァーなんだ」と。バッドカーヴァーがあるから、彼はそうなり得たのだ。そこが伺えるエピソードが幾つかあり、読み応えは十二分だ。
2016/01/28
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