村上春樹翻訳ライブラリー - 冬の夢 (村上春樹翻訳ライブラリー f- 5)
村上春樹翻訳ライブラリー - 冬の夢 (村上春樹翻訳ライブラリー f- 5) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
表題作を含む5つの中・短篇を収録。いずれもフィッツジェラルドの初期、概ね『ギャツビー』に先行するもの。この時期、フィッツジェラルドは既に流行作家となっていたが、ここに収められたのは商業誌に「売られた」ものではなく、彼が作家として書きたかったものが集められている。ことに「冬の夢」と「メーデー」には、作家の生い立ちの影が濃い。ミネソタからニューヨークへ、そしてまた東部の(「メーデー」ではイエール大学)エリート子弟たちの生活と、そこに至ろうとする夢。あるいは、そうした世界から排除された者たちを鮮やかに描く。
2014/03/25
buchipanda3
短篇集。「冬の夢」という題名が何か良い。静謐で憂いを帯び、それが醸し出す切なさはただひたすら美しく尊く感じられる。雪深いミネソタ出身のデクスターは少年の頃から華麗な人生を求める。彼の才能と行動力は成功をもたらすが唯一憧れのジュディーだけ叶わなかった。冬の夢は大いなる自然と老いの二重の無力感を残す。しかしそれは彼を強く支えてきたのだ。「メイデー」も夢を見た若者が描かれる。しかし戦後の高揚から覚めた世界はままならぬ不安と苦悶をもたらす。それはゴードンだけではなく彼らや彼女にも。その時代の混迷なる空気を感じた。
2023/11/24
コットン
若い頃(24~29歳)の短編小説集。各物語の最初にノートと称してわざわざ村上春樹が2ページ位の関連事項を書いているのはやっぱりフィッツジェラルドだからなのでしょうか?魔性の女を題材にした表題作が興味深い。後『リッツくらい大きなダイアモンド』の笑ってしまうぐらいのあり得ない着想と予想外の結末が何とも地味で良い。 (著者が熱心に書いても、軽くてハッピーエンドを求める当時の風潮とは相容れなかったようだ)
2021/09/17
Small World
やっぱりフィッツジェラルドは短編の方が好きかもしれません。w どの作品も面白かったですが、今までに読んだものとは、若干、印象の異なる作品が多かった感じです。個人的には表題作品よりも「リッツぐらい~」が面白かったです。
2017/12/18
miroku
表題作『冬の夢』が秀逸。過ぎ去りし季節への憧憬の念は、切なく胸に染む。
2017/03/15
感想・レビューをもっと見る