夜の鼓動にふれる: 戦争論講義
夜の鼓動にふれる: 戦争論講義 / 感想・レビュー
ラウリスタ~
20世紀の哲学が、机上の空論や重箱の隅をつつくもの、あるいは注釈の注釈といったものではなく、あくまで人間のおかれた極限状態から必然的に生まれたものであることを解き明かす本。それぞれの講義の終わりには参考文献としていくつかの本が挙げられ、現代哲学への入門となっている。大学一年生のことにこういう講義受けれたら興味を持って読み進めたであろうことは間違いない。日本語を使うという前提において(「大戦」と「戦争」「役」「乱」「変」などの違い)、我々は既に思考上の誘導を受けていることなど、面白いテーマが多い。
2015/09/06
タカヒロ
めちゃくちゃ面白かった。積読状態だったんだけど、この世界情勢のなかで読むべきだろうと思って紐解いてみた。20年前の本なのに、一切古びていない。それだけ、世界戦争というものの本質を捉えているということだろう。ヘーゲルを西欧近代の極点として、それに対するフロイト、バタイユ、ハイデガー、そしてレヴィナス。戦争というテーマでこれらの哲学が繋がっていく様が本当に面白い。難しことは目に見えているので、これらの書物には踏み入ったことはないが、読んでみたいと思わされる。「夜の鼓動にふれる」というタイトルも良い。
2022/03/26
茶幸才斎
欧州の近代化は、自然を人間の管理下におき、国家を国民の運営化におき、残りの世界を丸ごと欧化し、その帰結として、戦争は相手方に政治的要求を強要する手段から、総力戦による相手方の機能殲滅を目的とする純粋破壊行為となった。そのような戦争の形として、20世紀の二度の世界戦争と冷戦、ヒロシマやアウシュビッツを経た世界で今後、人間は主体的に存在できるのか、と哲学的思索を巡らせ問題提起している。(皮肉として云えば、)科学的に自然を制し文明を高度化した我々が、科学的に我々自身を定義できないことが、どうしてありましょうや。
2017/05/19
きさらぎ
再読。「現代思想」の講義録で、「世界戦争」を切口に、主に20世紀以降の思想を扱う。近代西洋思想の到達点としてのヘーゲル、「主体性」という概念を「無意識」から揺さぶるフロイト、ハイデガー、レヴィナスなど。対象を白日の下に「見る」ことが出来る「昼」に対し、距離感を失い、聴覚や触覚によって認識するしかない「夜」の不安。存在に豊穣さを見るハイデガーと、その非人格性をあぶり出すレヴィナス。宙づりになった無根拠の「人間的世界」、バタイユの恍惚。アドルノの啓蒙と野蛮。未だに「読むべき宿題」が沢山詰まっている一冊(苦笑)
2015/11/01
きさらぎ
この本から受けた影響は大きいですねえ。哲学の入門書、といっていいと思いますが、ここからレヴィナスやアウシュヴィッツに関する思考に入っていけたことはすごい収穫でした。
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