ゆらぎの日本文学 (NHKブックス 839)
ゆらぎの日本文学 (NHKブックス 839) / 感想・レビュー
ハチアカデミー
「日本=日本人=日本語=日本文学」という等号の暴力性をあばく。漱石に始まり、牧野信一、宮沢賢治、横光利一、荷風、谷崎、中島敦(ナブ・アヘ・エリバ博士!)、大岡昇平らのテクストを基に、文体の、主体の、日本語の、場所の、歴史のゆらぎを読み解いていく。前述の等号の背後には、「国民国家」としての「日本」という欲望が表れていることを指摘し、そこで切り捨てられてきた様々な「近代文学史」の可能性を提示していく。牧野神話の魅力を論じた第三章、「日本語文学」の可能性を論じた終章が刺激的。文学と国家がゆらぐ一冊。
2015/06/15
ゆに
何年ぶりかの再読。セイタカアワダチソウの指摘や水村美苗論等、以前は(読解力のなさゆえに)読み飛ばしていたところが面白かった。
2018/02/23
s_mirai
9人の作家を取り上げた力強い評論だった。同時代性を重視した感じはあるが、日本語・日本文学の自明性を疑う手つきは見事。
2010/03/11
琴咲
歴史という観点から日本近代文学を見ていくことで新たな文学の読み方を知った。「日本文学」は「日本」で生まれ育った「日本人」が「日本語」で書いたものであるという錯覚は何故起こったのか。これを読んで今まで持っていた日本近代文学観が変わったような気がする。
2009/07/27
白石佳和
リービ英雄や多和田葉子などの日本語文学について論じた嚆矢の書。ポストコロニアリズムへの問題意識が高いが、夏目漱石や宮沢賢治などの時代背景を含めた読みの視点が大変参考になった。中島敦の分析も、山月記だけでなくその他の作品も含め、人間性の欠如の問題に特化した戦後の読みを批判する視点が参考になった。改めて近代文学を読み直したいと思った。
2022/01/18
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