黎明に起つ
黎明に起つ / 感想・レビュー
藤枝梅安
北条家の祖、伊勢宗瑞の一代記。備中、伊勢、京などを転々とし、今川家に仕えた後、名を新九郎から宗瑞に改め、相模国で三浦氏と激闘を繰り返し江戸湾を制圧するまでの生涯を描く。応仁の乱の複雑な親類・主従関係の記述には、ややうんざりさせられたが、後半、新九郎が駿河に移るあたりからようやく面白くなった。筆者はあとがきで「『北条早雲』という名を使わなかった」と記しているが、252ページの合戦シーンで「北条方が攻め寄せてくる」と書いてある。ウッカリミスだろう。全体として文が硬すぎる気がする。とにかく「気合」が入った1冊。
2014/02/11
けい
いわゆる戦国時代の先駆けとなった北条早雲(伊勢新九郎)が北条氏の礎を築いていく様子を綴る物語。民のための国を作る早雲の思想を物語の中心に据えて、室町時代末期の混沌とした世の中を描きます。初代の物語に描かれる人物像としては清濁併せ持つタイプで描かれる場合が多い様に思うのですが、こちらはやや清が勝った人物像として描かれています。司馬さんの「箱根の坂」のイメージが強いせいかやや物足りなく感じました。戦いの描写は大いに引き込まれ楽しめましたが、ある程度歴史背景を理解していないと展開についていけないところも。
2013/12/28
B-Beat
◎秀吉による天下統一。その秀吉に最後に屈した北条氏。その藩祖早雲の一代記。備中(今の岡山県)の生まれだとは恥ずかしながら初めて知った。室町幕府の将軍家に縁があって栄達、駿河の今川氏の庇護のもと伊豆や相模を平定し関東に五代続く北条家の礎を築く。九州に住む身としてはそんな歴史自体が凄く新鮮。鉄砲が伝わる以前の合戦における戦法や検地などを実施してその領国の経世済民に努める姿なども興味深く読めた。この作家さん、本作で2作目なれどその作風は正統派歴史小説というか歴史小説の本流という点でお気に入りに登録という感じ。
2014/06/11
TATA
戦国時代の黎明期に民の世を目指し戦いに明け暮れる日々を生きた伊勢宗瑞、後世で北条早雲と呼ばれた人物の一代記。武田、上杉など戦国群雄に連なる系譜も確認でき、時代小説好きには楽しめる一冊だと思います。ただ、登場人物の多さに複雑な官職などそれなりに時代背景が分かってないと難読の一冊でもあるかと。
2017/06/17
baba
小田原北条氏を創設した伊勢宗瑞(北条早雲)の一代記。関東管領や山内公方、鎌倉公方などとにかく登場人物が多く、史実の解説も多い、その上混乱した関東の勢力争いに対抗する相手が目先の利益に変わることが多く、吞み込むのに時間がかかった。しかし、病人や被災民に対して救いの手を差し伸べ、民の平穏を願う宗瑞の姿は次の時代に引き継がれる。
2017/06/02
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