シルクロード 第3巻: 絲綢之路
シルクロード 第3巻: 絲綢之路 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
第3巻は楼蘭と黒水城(カラホト)。今回は井上靖は同行してはいないが、巻頭に『楼蘭』への想いを込めた一文を寄せている。本書のタイトルには「幻の」という言葉が付されているが、たしかに楼蘭も、そして黒水城もまた今もって確かなことは不明である。しかも、それらのいずれの地も今となっては砂漠の中にわずかにその痕跡を残すのみである。この取材より80年前のコズロフや50年前のヘディンの頃も既にそうであったが、それでも彼らは貴重な文物を持ち帰っている。ヘディンもまた私には実に懐かしい名前であり、彼もまた憧憬の的であった。
2020/10/31
NAO
かつて、西域の、シルクロードの重要拠点として栄えた桜蘭とカラホト。二つの街は、今はなく、砂漠の中にかつての城跡がわずかに残るのみ。「さまよえる湖ロプ・ノール」ともども謎めいた桜蘭に関する記述は、砂漠と歴史のロマンをかきたてる。ただ、砂漠地帯が中国の軍事的な重要拠点となっているだけに、取材班の苦労は大きかったようだ。取材記からは、そういった問題があるにも関わらず取材を許可した中国側の思惑や、それに応えなくてはならない日本側の中国への配慮が、ちらちらと垣間見える。
2020/11/05
ジャズクラ本
◎第3巻は敦煌から楼蘭(ローラン)に向かう行程と酒泉から黒水城(カラホト)へ向かう2つの行程を掲載。楼蘭の序文は井上靖が、一方、黒水城の跋文は当時九州大学教授の岡崎敬が担当している。双方の道程には軍事施設があるために迂回を余儀なくされ、撮影許可がおりないなどの制約が厳しかったようだ。内容も楼蘭・黒水城共に大きな発見があったり(ミイラ、仏像、木簡など)、哀惜を誘う物語(黒水城の李陵や黒将軍の物語)が紹介されていたりで非常に楽しめた。充実した一冊でした。
2022/01/02
Tanaka9999
1980(昭和55)年日本放送出版協会発行の単行本。ローラン・カラホトともに遺跡の紹介。ローランの遺跡は水がなくなって滅亡。有名どころでなければそんな街が他にもあるのではないだろうか、そんなことを思った。カラホトは河西回廊の裏通りみたいな表現が何度も出てくるのだが、読んでいる時はちょっと理解できなかった。読み終わった後地図を見るとハミ(哈密市)から北京へ通じる道がある。これのことかぁ、と納得。それにしても明代まで国境となる騎馬民族と農耕民族の境ってかなり南なのだなと。
2020/09/26
恒々
歴史に僅かにしか記録にない楼蘭国。物流に有利な西域の入り口にあるが、大国に隣して翻弄される小国の悲哀が強く滲む。地理は敦煌との関係が分かりにくくチベット族との関わりが登場したり、消える湖ロプノールなど奇怪な印象である。衛星で見ると青い湖がみえ、白竜堆ではないにしても塩基の業か。河西回廊を跨ぎ、カラホトはモンゴルに近づく。ハミとか天山山脈へ繋がる別の道の途中でもある。何十日も砂漠を旅した人々の苦労が思われる。
2021/08/15
感想・レビューをもっと見る