ユーラシアニズム ロシア新ナショナリズムの台頭
ユーラシアニズム ロシア新ナショナリズムの台頭 / 感想・レビュー
Willie the Wildcat
大陸故の壮大な概念。本来は、言語を起点とする”主権”を問う純粋さ。OGPUやエトノイの概念が根底。ドゥーギン氏が西欧から学んだ地政学と極右思想を活かす件が、現代にも続くロシア内と西欧内の2つの回帰が印象的。加えて、ドゥーギン氏の紆余曲折の半生と、ロシア政体の変遷の考察も興味深い。一方、文化が政治となる過程。近代のゴルビー・エリツィン両元大統領、そしてプーチン大統領に至る近代ロシアの”政治劇”も、これまでとは異なる観点が付加される。対照的なドゥーギン氏の末路は、自業自得でもあり皮肉。
2017/10/19
Isamash
チャールズ・クローヴァー・フィナンシャルタイムズ紙の前モスクワ支局長による2016年著作訳本。現在のロシアはプーチン独裁に見えるが実はそうでなくユーラシアニズムという右翼的思想に基盤を置くシロビキの人々の意向にプーチンは乗っかっているのが実態と説く。ユーラシアニズムはアレクサンドル・ドウーギンが教祖的存在の地政学的イデオロギーで、共産主義が消失し欧米のリベラルな民主主義に共感できないロシア知識人の空虚感を埋める西洋アジアにまたがるロシアの独自性を訴える思想らしい。大日本帝国の思想・大東亜との類似性に驚愕。
2022/05/07
34
ロシアの極右思想家アレクサンドル・ドゥーギンがこの本の主役。彼は「ポストモダン」を地でいくような人物で、その半生は凄まじく、その政治理論は信じ難いほど馬鹿げている。しかしその理論が現実の政治と対応をもってしまうのはロシアならではの風景と言える。一冊の本としてはおもしろくても、そのなかで生きる人間にとってはたまったものではないだろう。ロシアの現代史に興味を覚えた。
2018/02/25
Miyoshi Hirotaka
ロシアの近代化のスタートはわが国と同時期。ロマノフ王朝下では立ち行かず、極東の小国だったわが国にさえ負けた。結局、近代化推進には社会主義革命という権力奪取を選択したが、70年で崩壊。ユーラシアニズムとは、ソ連時代を試練の時と読み替え、断絶を埋めようというロシア語圏の動き。中身は地政学という理論、ロシア的アイデンティティへの共感、カリスマ・リーダーへの私淑で構成されている。国際協調のモデルは、ドイツ語圏とロシアの同盟により、勢力が均衡し、安定した主権国家体制がヨーロッパに築かれた19世紀前半のウィーン体制。
2018/01/11
coolflat
373頁。ペロポネソス戦争で海洋国家アテナイが、最大の内陸国家スパルタに勝利を収めた。それ以来、ほとんどの武力衝突は強力な海軍力と、強力な陸軍力との間で戦われてきた。現在のランドパワーであるユーラシア内陸部、つまりロシア帝国の領土は絶えずシーパワーとの競合にさらされる運命にあるが、地理的に内陸国家の宿命を抱えたロシアは、大陸内に封じ込められる孤立を恐れて絶えず不凍港を求め、世界を打ち負かせる海軍を建設しようとする。他方、大英帝国(とその後継者である合衆国)は、陸地の囲い込みを策して東欧やアジア内陸部を狙う
2022/11/16
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