新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか (NHK出版新書)
新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか (NHK出版新書) / 感想・レビュー
白義
ナショナリズムに関する本としては最良のものの一冊だろう。中立的でリアルな立場からのナショナリズム論を通した現代思想入門にして、日本現代思想批判。左派の国民国家批判にも、右派の国家崇拝にも全く与せず、国民国家の起源とメカニズム、システムを冷静に原理的に解説し、社会問題を考える枠組みと社会保障機能としての国家に適切に運営、関与するのが大切と言う。フーコー、ドゥルーズ的な発想の強い反ナショナリズム批判というのは珍しいと思う。萱野には珍しくやや攻撃的だがさすがの圧倒的力作だった
2011/11/10
masabi
日本で受け入れられがちな安易な反ナショナリズムの言説がその実ナショナリズムを理論的根拠とすることで矛盾を孕むことを示し,暴力を忌避しようとして反ナショナリズムを展開するのではなく暴力を見据えて現状認識をすべきと主張する。ナショナリズム論はゲルナー,アンダーソンに,資本主義と戦争についてはドゥルーズ=ガダリに,国家の変容をフーコーに依拠する。
2015/03/24
おおかみ
ドゥルーズ=ガタリやフーコーらを援用しつつ、ナショナリズムの定義、役割、変遷を考察、日本の人文思想界における紋切り型の反ナショナリズムを痛烈に批判する。やや過激だが理路整然としており、満足度の高い一冊。「現代思想の新しい入門」と銘打つのも納得で、自明視された言説をクリティカルに見つめ直す作業が実に爽快である。
2011/11/29
かふ
おフランスで現代思想学んだ人らしくちょっとイヤミな性格だ。最初にドゥルーズやデリダは反ナショナリズムではないと書いているが信ナショナリストでもないのだからナショナリズムが善のように書くのは詭弁。反権力であるのは間違いないし。ナショナリズムが単に国家主義っていうのでもないようでネーション(生まれ育った共通の言葉の問題だ)、その線引が交わる人(二重国籍)とか少数言語の民族の弾圧のされ方とか見ると悪としか思えない。善悪を問う問題でもないがナショナリズムに拒否される少数派の問題とか。
2017/11/15
NICK
アンダーソンの『想像の共同体』を読んでナショナリズム批判した気になっていた自分にはかなり衝撃的な内容だった。国民国家が言語の共通性や産業化によって、つまりかなりの程度、国家に内在的な要素によって成立してきたという以上、安易な反ナショナリズム的言説はそのままナショナリズム的言説に回帰してしまうというのだから驚きだ。あのネグリ=ハートもその落とし穴にはまっているというのだから…… 元々ネトウヨ的言説に反感を持ってナショナリズムに興味を持ったのだが、厳密に知ろうと思うなら認識を改めなければならないようだ
2014/10/30
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