瓦礫の中から言葉を わたしの〈死者〉へ (NHK出版新書)
瓦礫の中から言葉を わたしの〈死者〉へ (NHK出版新書) / 感想・レビュー
yumiha
何か違和感を持ちながら、それを言い表す言葉がない私に、そうだ、これかもしれないという言葉を与えてくれる作家である辺見庸は、宮城県石巻市出身。本書は、3.11後の世間の風潮を見つめ考え暴いてくれた。空恐ろしい光景がTVから流れ出てくる日々に、いち早く反応し心温かい言葉を発する人々に感心しながらも、なかなかそうできなかったことを思い出す。副題の「わたしの〈死者〉」とは、3.11で亡くなった数値化された死者・行方不明者ではなく、辺見庸が身近に感じていた方々(一人一人の顔が浮かぶ)を含むのだという強い拘りだろう。
2022/12/19
ころりんぱ
教科書に載っていそうな文章だなと思いながら読み始めた。慣れないので少々読み疲れる。震災を経て、世の中に溢れた言葉や自己抑制された人々の心へ疑問を投げかけ、辺見さん自身の思いを語っている。だんだん言いたい事が分かってきて、とても興味深かった。確かに引用された過去の作家の文章を読むと明らかな違いを感じたし、今のメディアや一個人の発言はやっぱりいろんな空気を読んでいて(読まなきゃいけなくて)抑圧の中に置かれている気がする。そんな中に自分がいることも自覚しないといけないなと思った。
2015/09/25
万葉語り
先日受けた研修の講師が「震災関連の本ではこれが一番おススメ」と言っていたので読んでみた。死体を映さないテレビ報道。助け合い、思いやりのベールに覆われ、真実を率直に語ろうとすると不謹慎だと謗られる社会。言葉で語るべきなのに、言葉を規制された現在の日本の状況をこれほど的確に言い当てた本に会えてよかった。誰かにこの本をぜひ薦めたいと思った。2017-125
2017/07/30
八百
海沿いの街を飲み込んで行く津波の映像に日本中が言葉を失った…震災を目の当たりにした石巻出身の著者がそれらの言葉とは何かを掘り下げる。夥しい死者を隠し数字だけを羅列する報道を「言葉の地殻変動」と断じACのCMばかりのテレビを「言葉の戒厳令」、都合の良い嘘で糊塗した原発事故の真実を「言葉と言葉の間に屍がある」と批判する。そしてもうひとつの取り組みとして原民喜や宮沢賢治の詩を例に挙げ言葉の持つ可能性にも言及しているところも興味深い。難しくなりがちなテーマをここまでわかりやすく解説してくれた辺見氏に敬意を表したい
2018/03/21
ちゃこばあ
同時読みしていたSAPIO4月号でも、キャンベル氏が「3.11で日本人が見せた忍耐や秩序は凄いと思う。しかしそれで全てが語れるのか。あの沈黙の中で何を思い、どのような喜怒哀楽を抱えていたのか。日本礼賛本からはそういう深い部分が見えてこないし、日本人自身も、忍耐や秩序の奥にある何かモヤモヤしたものを見つめようとしない。最近の日本人論は自虐的か無条件の礼賛かどちらかだが、その中間のグレーゾーンにこそ真実があるし、・・そこを見つめてこそ新しいものも生まれる」とありました。まさに辺見氏はそのグレーゾーンをえぐる
2015/05/09
感想・レビューをもっと見る