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いまこそ「小松左京」を読み直す (NHK出版新書 629)

いまこそ「小松左京」を読み直す (NHK出版新書 629)

いまこそ「小松左京」を読み直す (NHK出版新書 629)

作家
宮崎哲弥
出版社
NHK出版
発売日
2020-07-10
ISBN
9784140886298
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いまこそ「小松左京」を読み直す (NHK出版新書 629) / 感想・レビュー

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ろくせい@やまもとかねよし

小松SFを考察する素晴らしい論考。小松SFは自然科学の外を用いる文学的技術ではなく、自然・社会・人文科学を包摂する哲学だと。「地にはー」は現実に対する虚による自由さの探求を。「果てしなきー」は文学的想像力による科学的相対化を。「日本沈没」は国家はなく地域的集合体が社会の主体であることを。「ゴルディアスー」は実存や実体だけが主体ならその集合は異常な乱雑さから崩壊することを。「虚無回廊」は個々の混沌とする存在で結果として形成される世界や方向を。小松さんは科学がほんの欠片であることを自覚し世界に挑戦したと評す。

2022/04/17

へくとぱすかる

科学の解説本を読んでいると、小松左京の小説がなんとなくわかるように錯覚するのだが、なかなかどうして、小松文学の奥深さはそんなものではなかったようだ。そこから先、極限まで思考して問いかける姿勢が、作品を貫いていることを知る。代表作とされることの多い「果てしなき流れの果てに」がまず論じられるが、かなり以前に通読したものの、圧倒されて、しびれるように読み終わった記憶だけが残っている。ぜひ読み返したい。小松作品の根底には、少年時代の戦争体験がまずあり、それが歴史や時間をテーマにした作品につながっていった、と。

2020/07/20

keroppi

「復活の日」や「日本沈没」や「アメリカの壁」が、今の時代を予言したと話題になっている。この本は、小松左京の代表作を振り返りながら、その表層的な事象ではなく、奥にある思想を読みとって欲しいと訴える。戦争が終わらなかった日本を扱った「地には平和を」を含めて、基本としてある現実を否定する想像により、今ある世界や自分と「出会い直す」ことになる。その「出会い直し」が小松左京作品の魅力と言えるのだろう。ただ、その想像力の素晴らしさが「出会い直し」を可能にしているのだが。今こそ、「小松左京」を読み直したくなった。

2020/09/26

パトラッシュ

小松左京と同時代を歩んだが、作品の面白さに感心してもそこにこめた思想までは考えが及ばなかった。哲学や宗教の専門用語が混じる文章はやや読みにくいが、『日本沈没』などの有名な長編だけでなく中短編までも読み解き、小松が単なるSF作家ではなく人類が地球で生きる上での「業」を追求してきたプロセスを明らかにする。「なぜ宇宙はできたのかの解明を神学の対象にする」ことを小説の形で実現したからこそ、自然災害やパンデミックなど人の世の未来を見通せたのだ。ニーチェは「神は死んだ」と述べたが、小松思想は「宇宙こそ神」と唱えるか。

2020/11/22

coolgang1957

小松左京……良くここまで深く考察できるもんです。難しい言葉使いが苦労しました。小松左京といえば「日本沈没」「復活の日」etc.メジャーなものは読んだことありますが、イメージは〝大阪万博〟〝米朝との楽しげな会話〟などで、宮崎さんのこんな深読みは面白い。/「……その手つづきそのものが、実は大変西欧的なパラダイムに滲透されている……」(p 246)➡︎ニュートンやアインシュタインも実は地球的なパラダイムに滲透されてないかと物理学は正しいのかとちょっと心配!

2020/10/29

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