家族と社会が壊れるとき (NHK出版新書 642)
家族と社会が壊れるとき (NHK出版新書 642) / 感想・レビュー
けんとまん1007
映画監督であるお二人の対談・評論。カメラという媒体を通して、社会を描く根底にあるものが伝わってくる。人と言うものに対する優しい眼差しと、何倍も厳しい眼差しが交差する。それぞれの手法や描き方の違いも興味深い。そこは、それぞれのお国柄(文化・歴史)の違いからきているように思う。一方、共通するのは、メデイアの本来果たすべき役割と、それと真逆の方向へますます進んでいる現状への危機感。まさに、共感するところでもある。そして、社会が何故、それを支持(消極的支持も含め)するのかがわかる。
2022/07/28
燃えつきた棒
僕がケン・ローチを知ったのは、たぶん『大地と自由』でだったと思う。 スペイン市民戦争を描いたあの映画に感銘を受け、『ケス』、『やさしくキスをして』、『麦の穂をゆらす風』、『わたしは、ダニエル・ブレイク』、『家族を想うとき』と、かれこれ十八本も彼の映画を観てきたわけだ。 いつのまにか、ワイダ九本、アンゲロプロス十本、トリュフォー十四本、ベルイマン十六本を超えて、僕が一番多く観た映画監督になっていた。 ローチが社会に対して抱え続けている怒りや、社会の底辺で貧困にあえいでいる人々に対する彼の視線が僕は好きだ。
2023/11/06
おさむ
日英映画界の数少ない「正統派」2人の対談。バリバリの社会主義者のケン・ローチ氏に対し、是枝裕和氏はリベラル派のスタンスだが、社会や人間、家族を見つめる視点は通じ合う。是枝氏は日本人は独立と自由を、税金を使って担保しているという主権者意識の希薄さが問題の根源にあると指摘。また、映画を社会的なメッセージの道具と考えるのは誤解だとも。他方、ローチ氏は「私たちは少数派の声になろうと努めているのではない。大多数の持たざる者達の声になろうとしているのだ」とし、決まり文句を疑え、と説く。2人ともロックで、クールです。
2021/01/30
活字スキー
町山さんの評論で興味を持ったケン・ローチ監督と、彼を師と仰ぎ『万引き家族』でパルム・ドールを受賞した是枝裕和監督の対談に大幅加筆して書籍化したもの。両者の作品はまだ一作ずつしか観ていないけれど、お二人の真摯さと熱意と気骨を感じられて良かった。無知と不寛容が人々を分断し様々な格差が社会を蝕む現実に対して、映画という手段で立ち向かうお二人に通じるもの、異なるもの。まずは、こういう作家が堂々と活動を続けられる社会でなければ。
2022/12/12
K1
異なる意見を持つ人たちであっても、社会がその人たちの存在を敵視して「あんな人たち」と呼ばず、しっかりと包摂していく。そのような環境こそが民主的であり、健全な社会のはずですー危機的なほど、そうなっていませんよねぇ。自分なりに考えて、たとえ小さくとも具体的な行動に落としていくしかないーそんなような気がします。
2021/01/12
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