母は娘の人生を支配する なぜ「母殺し」は難しいのか (NHKブックス)
母は娘の人生を支配する なぜ「母殺し」は難しいのか (NHKブックス) / 感想・レビュー
ころこ
「父殺し」は克服と成長と共に語られますが、「母殺し」は既に身体性を同一化させた上で、更に母の身体の言葉によってしか娘が語れない同一化と反復の呪縛にある。しかも、抑圧から解放された社会において、その矛盾は初めて顕在化されやすくなるという逆説の物語でもあります。本書での事例は著者の臨床よりも、マンガや小説の引用が豊富になされています。特に大塚英志から孫引きされるマンガの引用が、著者の男性としての当事者意識の薄さと「母殺し」クオリアの欠如により、「母殺し」の魔術的な魅力が露悪的に増幅させられているようにさえみえ
2021/05/03
とももん
最近思うところがあってこの本を読みました。どうも私は母に対する思いが強すぎる気がする、と。そして、私自身も娘に対して間違ったことをしてないか不安になり読んだものです。参考になったようなならなかったような。母親自身の人生を生きることが娘の幸せ。なるほど。とにかく距離をあけることが重要だというのはわかった。
2018/01/29
阿呆った(旧・ことうら)
◆母娘は、父息子のようなわかりやすい支配関係にない。あるのは『支配なき支配』◆母親が感じる痛みや悲しみの大半は『私たちが自分の子供をコントロールすべきだ』と言う信念から生まれる。◆母親は娘に対して『ほどよい姿勢』を保つのが困難。◆母娘関係を「自立」「女の幸せ」という意味で満たそうとすると困難が生じる。◆『無意味なコミュニケーション』が、母娘の関係を柔らかくする。◆精神分析医の斉藤環先生の本。芥川賞作品『乳と卵』や、萩尾望都作品も読み解いている。母娘の関係性を精神分析的に知る上で、有意義な一冊。
2016/07/05
zirou1984
オイデュプス王やカラマーゾフの兄弟が代表的な様に、息子による父親殺しが小説のテーマになっても、娘による母親殺しという主題は読んだ記憶がない。また友達親子でも母娘関係を扱うのが中心であり、父息子の場合というのは少数ではないだろうか。本書ではジェンダーや支配と保護、承認と愛といった精神分析で用いられる概念を用いながら女性性というのが持つ社会的困難さ、身体と言葉の不可避的関係性という特徴にその原因を見出そうとする。ここに解決策がある訳ではないのだが、母―娘という関係の困難さについて理解するために読んで損はない。
2013/04/11
きなこ
☆☆☆☆☆男性、女性であるということは社会的・文化的な慣習によって支えられた区分に過ぎず、そこにはいかなる生物学的な本質も関係していない。精神分析の観点から、父息子、母息子、父娘、の関係のどれとも一線を画した関係である母娘関係の特殊さを女性性の空虚さや複雑さを絡めて分析する。個人的には、「母と娘の関係」よりも「対幻想」とか、よしながふみの名著を取り上げている点とかに興味を持った。特に好きなのは第三章。一度読んだだけでは全てを理解することはできなかったので、何度か読んで自分の中に落とし込みたい。
2016/02/28
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