別冊100分de名著 「日本人」とは何者か? (教養・文化シリーズ)
別冊100分de名著 「日本人」とは何者か? (教養・文化シリーズ) / 感想・レビュー
おさむ
年末の読書にぴったりの本でした。河合隼雄の説く中空の構造、鈴木大拙の無分別智、折口信夫のマレビト論、遊女や遊郭に展開したいきの構造を説いた九鬼周造。いずれも名著とされながら読んでいなかったので、こうした形の解説本は重宝します。いずれも西欧の思考方法や哲学に疑問を感じて、足元を見つめ直すことで見つけた思考だけに、腑に落ちます。ともすれば、日本特殊論に陥ってしまう所をきちんと論理的に説明している点が良いと思います。
2018/12/30
ころこ
4冊とも「日本人とは」と問われた近代以降の本であり、何か事象や文献を解釈する着眼点に優れている。河合隼雄『中空構造日本の深層』は日本人の患者の治療を目的として日本の文化に接したことが、神話に潜む無意識を言語化するという学問的な行為と重なった、見事という他ない名著だ。神道には「開祖も、宗祖も、教義も、救済もな」く、「中空であるがゆえになにかが宿っている」という空気が支配している。斎藤環はここから丸山真男の「お神輿モデル」の政治論や『失敗の本質』につながる問題点を論じている。
2022/11/03
壱萬参仟縁
日本人以上に日本に愛情を示す外国人:フェノロサ、ハーン、バード、コンドル(8頁)。コンドルの鹿鳴館、ニコライ堂、有栖川宮邸の設計で知られる(9頁脚注)。日本歴史の写真で出そうな感じがしてきた。九鬼周造は、欧州哲学の最高峰で一番重視するのは同質性、同一性(12頁)。国宝當麻曼荼羅。当麻寺(たいまでら52頁)は、真言・浄土兼宗の寺とのこと。とうま と読んでは恥。言語もカルチャーも柔軟で、海外の文化への好奇心も旺盛、新しいテクノロジーを取り込んでいく日本文化の特徴は、経済発展の原動力になっていた(117頁)。
2015/07/31
to boy
4人の著書をわかりやすく解説。九鬼さんの「いきの構造」は前から気になっていたので、ここで内容を解説してもらってありがたい。「いき」という情緒的なものを哲学的に解釈する手法も、内容もすばらしいくてちょっと感動。河合さんの「中空構造・・・」は初めて知りましたが、これまた鋭い考察に感激。古事記を読み解くことで日本人の心の奥が見えてくるという素敵な内容でした。大拙さんの「日本的霊性」は既読なので、内容を再確認できました。折口さんの「死者の書」だけはまったく理解できず。ちょっと苦手な内容。
2017/07/22
Takayuki Oohashi
百分DE名著「日本人論」で感動したので、そのムック本を図書館から借りて読みました。「いき」という日本の感覚が、秘められたエロということを、友人と映画の「細雪」をネタにして話しました。あと、一かゼロという世界のグローバリズムでの二元論の中で、無分別智や中空構造という日本の意識のあり方が、何か光明をもたらすかもしれないという論が非常に興味深かったことを思い出しました。赤坂真理や中沢新一などの他の著作を読んでみたくなりました。
2015/12/28
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