別冊NHK100分de名著 時をつむぐ旅人 萩尾望都 (教養・文化シリーズ 別冊NHK100分de名著)
別冊NHK100分de名著 時をつむぐ旅人 萩尾望都 (教養・文化シリーズ 別冊NHK100分de名著) / 感想・レビュー
kaoru
BSの萩尾特集をもとに刊行された本。4人の識者が作品を語るが番組以上に奥深い内容である。読み返して思うのは、萩尾さんが活躍した50年は日本女性の生き方が大きく変質した時代だったこと。縛りから放たれた女性たちは多様な生き方を選択するようになったが別の問題も生じてきている。本書で紹介された名作群はもちろん素晴らしいが、私は原発を扱った『プルート夫人』、近作の『AWAY』に萩尾さんの知性と危機感が横溢していると感じるのでこうした作品も取り上げて欲しかった。萩尾さんにはさらなる進化を遂げていただきたいと思う。
2021/07/25
neimu
TVでのインタビューを含めて、丁寧に採録・構成されているので、一気読み。懐かしいのは勿論のこと、最近かまびすしい話題になっていることも含めて、それぞれのコメンテーターが述べる望都さまの世界を堪能した。SF作品にしても家庭やバレエ、心理を背景にした一連の作品も、人の死を扱っていることに改めて考えさせられるのは、父を失って人の死を実感したからだろう。作品の中に投影される人の死は誰の死の代わりなのか、改めて創造世界の中に何度も描かれる死と再生の物語に浸りたいと思う。望都さまは既に作品世界そのものなのだから。
2021/05/26
天の川
テレビは観ることができなかった…。識者の方々が読み解く、「トーマの心臓」「イグアナの娘/半神」「バルバラ異界」「ポーの一族」。それぞれの方が深く洞察されていて興味深かった。「ポーの一族」も「トーマの心臓」もほぼリアルタイムで読んだ。今回の分析を読んだ上で再読したら、もっと違った読み方ができるのかもしれないと思った。そして「イグアナの娘」と「半神」。心の奥深くに爪を立てられるような作品で、ヤマザキさんの読み解きが胸に迫った。
2021/07/12
shikashika555
小説を書くことも並大抵ではないだろうが、漫画となると 構図もコマ割も含めひとつのプロットを完成させるのにどれだけ色んなことを考えないといけないのか、どれだけの技術を手先から紙に落としていかなくてはならないのか。 もの凄い才能の人だ。 萩尾作品に一貫する「自分の属する集団に対する違和感」とそのために用意される多層なSF世界を 畏敬の念を感じながら読んでいる。 どの時代にもどの文化にも普遍的にある苦悩を こんなに美しく かつ訴求力のある形で作品にできるのだなあ。 また読み返したい。
2021/08/22
ぐうぐう
1月に放送された番組は、なかなかに刺激的な内容だった。四者四様の解釈が楽しく、収穫も多かった。本MOOKは、時間の関係でカットされた論考、あるいは夢枕獏のように番組収録中に気付いた解釈を補足する場面もあって、読ませる。小谷真理のSF的視点で読み解く『トーマの心臓』、母との関係性から生まれた実存的寓話としての『半神』『イグアナの娘』という考察をするヤマザキマリ、ファシズムの誘惑とパラレルワールドがもたらせる運命への抗いを『バルバラ異界』に見る中条省平、(つづく)
2021/06/02
感想・レビューをもっと見る