解錠師〔ハヤカワ・ミステリ1854〕 (ハヤカワ・ミステリ 1854)
解錠師〔ハヤカワ・ミステリ1854〕 (ハヤカワ・ミステリ 1854) / 感想・レビュー
ひめありす@灯れ松明の火
心に錠を落とし、唇に鍵を掛けた少年、マイクル。鍵開けの天賦の才も、現金も、本当に彼の鍵を開ける事は出来なかった。彼の心を開いたのは、絵画の才能と、美しい彼女。絵を介した交流が心の錠を開き、やわらかな舌が唇が、強張った声を開放する。けれど、一度悪事に染まった手は、もう戻れなくて。昨年のこのミス海外部門第一位、翻訳作品が苦手なのでどうしようかと悩んだのですが、前評判の高さに思わず読んでしまいました。意外とさらさら読めて、あっという間に終わりました。最後のシーンは『罪と罰』の最後にも似たカタルシスがありました。
2013/06/26
GaGa
ミステリーというよりも、青春小説としての価値が高い作品だと思った。年代が交差する構成ははじめは少し読みにくかったが、読了するとある意味この作品の個性のようにも思えてきて不思議。でも、構成をもう一度正しても面白さは失われないと思うので考え直しても良かったかなと感じた。ともあれ、主人公が持つアメリアへの真っ直ぐな思い。ゴーストに次々に出されるお題に挑戦する姿は、スポ魂的な静かな熱さがあり、とても読み心地が良かった。
2012/02/16
☆よいこ
YA。8歳の時に残虐な事件に巻き込まれ言葉を発声出来なくなった少年マイクルは、ある事件をきっかけに金庫破りの技術を身につける。天才的な解錠技術を持ちながら「しゃべらない」ことで犯罪者に信頼されたマイクルは、様々な事件に関わっていく。金庫破りとして犯罪を重ねる17歳のマイクルと、8歳からの出来事とが交互に語られ、次第に時代が近くなっていく。▽マイクルは確かに金庫破りに魅せられているが、過酷な運命に振り回された哀れな子どもだ。アメリアとの出会いは救いであったと思いたい。▽新装丁がでてる。新しい表紙の方が魅力的
2021/03/15
藤月はな(灯れ松明の火)
奇跡の少年、マイクル。口が聞けなくなった彼だが、彼には二つの才能があった。一つは観た光景を写真のように描けること、もう一つは錠前破り。特にマイクルが古びた錠を初めて開けた時の感覚の描写が鮮烈すぎて自分がマイクルに一瞬、なったのかと思った位でした。そしてアメリアとの交流が互いに不器用すぎて何度も「早く、素直になって抱きしめてやれよ!」と思ったことか(笑)しかし、初めての対等な親友であったグリフォンとの最後の会話が切ないです。そのため、とりあえず、ブライアンらとマーシュは一発、殴らせてくれ。
2014/10/24
papako
やっと読みました。漠然と思っていた物語とは少し違う印象。少年時代にひどい事件にあい、喋れない主人公が、自分を閉じ込めた鍵を開けることに喜びを見つける。しかし、悪人達に見込まれ次第に泥沼にはまっていく。解錠師になる時と最後の事件の2つの時間軸で物語が進み、最後は希望のあるラストへ。彼が鍵を開けることになった事件は悲惨ですが、しかし彼はアメリアに出会えた。それは素敵な救いだった。なかなかあたたかい物語でした。
2016/07/08
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