オッド・ジョン (ハヤカワ文庫 SF 221)
オッド・ジョン (ハヤカワ文庫 SF 221) / 感想・レビュー
サイバーパンツ
超越的な知性を持つ超人類たちの目から人類の愚鈍さを描くステープルドンのミュータントSF。伝記形式を用いていたりと、小説のスタイルは『シリウス』に近いが、ドライな筆致も相まってか、人類に対する諦観に満ちた終わりは、犬でありながら高い知性を持つシリウスの居場所のない孤独を描いた『シリウス』とは少し違った、絶望に近い重みがある。それだけに、終盤の切ないラブロマンス的要素の蛇足感は否めない。こういう面もステープルドンの味ではあるが、本作は超人類を不気味なものとして描いているのだから、徹頭徹尾、冷めたもので良かった
2017/06/09
新地学@児童書病発動中
ステープルドンの超人をテーマにしたSF。超人たちが、普通のSFのように、ロマンチックな存在として描かれていないところが興味深い。あくまで、異質な存在として、ときには残酷な面も持つ者として、小説の中で登場してくる。ラストは、ステープルドンの人類全体への絶望として読めるので、重たくて悲しい。
2011/08/23
しんかい32
人知を超えた崇高な目的に身を捧げ、現人類を見捨てて滅びていく超人類たちの運命を酷薄なタッチで描く。とにかく超人たちのキャラが立っていて、現代でも十分通用するんじゃないか。とはいえ、彼らの非人間性を強調しておきながら、それとなくジョンと超人の少女(名前忘れた)との悲恋にふれるあたりはあざといが、これもステープルドンの持ち味の一つのようだ。
2010/04/28
The-Q
アー、ダメだこれ。前半地獄のミサワが語る人類批判、後半教祖と信者という印象。前半は何を批判するにしてもパーツが顔面の中心に寄った子供が言ってるように変換される。後半殺人を犯しそれを筆者が許容するというくだりがすごく気持ち悪い。岬一郎の抵抗の岬一郎のようにこっちのモラリティを尊重するわけでもなく幼年期の終わりのように全く異質のものというわけでもない中途半端さが気持ち悪いのかもしれない。あと批判によってジョンは頭いいですよっていう描写方法も気持ち悪いのかもしれない。
2014/03/02
SAI
小学生のころに読んだ本書を児童向けに翻訳アレンジした「超人の島」をふと思い出して、児童書の方はもう手に入らないので、こちらを入手して読んだ。児童SFとしてはかなり異質で挿絵も含めて子供心に大きなインパクトがあった。通常の人間とは異質な超人として生まれたジョンを通して人間社会を描くことで人間の愚かさを描きつつ、それと同時に人間性を超越していることで時には冷酷に見え、最終的に理想に向けて孤立して滅亡を選択する主人公たち。人間的なものを超越したとしても決してそれが理想的とは言えるのか。そういう物語だったんだ。
2017/02/04
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