マン・プラス (ハヤカワ文庫 SF ホ 3-7)
マン・プラス (ハヤカワ文庫 SF ホ 3-7) / 感想・レビュー
ニミッツクラス
89年(平成元年)の税抜524円の青背初版。カバーは元々暗い。食料不足で近々戦争が起こる予定(コンピュータ予想)の地球。未開の火星に手を伸ばす合衆国は、完全なる環境適応の人体改造(もはやヒューマノイドと言うだけ)された宇宙飛行士を火星へ送り込む計画を進める。前提条件(食料不足、火星でサイボーグ一人が何をする)が幾分弱いが、そこはポールだもの。本書のウリは壮絶な人体改造のテクを超戦士ではなく超開拓者の誕生に向けた事だ。終章からの火星の様子と隠された結末にはクラークも涙目だろう。一読の価値あり。★★★★☆☆
2021/09/27
maja
火星仕様に奇怪な姿に改造された同僚を複雑な心境で見守るトラウェイ大佐。彼はその後、急死した中佐の代わりにマン・プラス計画を受諾する。彼の内省に深く影響してくる妻との関係や独善的な匂いを纏う知覚研究者、聖職者の学者、そして実は計画的に配置されて任務をこなす少佐などが絡められていたく読ませられる。そして驚くべき結末になんとも言えない心もとない気分になるのであった。再読。
2021/06/24
スターライト
ニュー・ポール誕生を告げる傑作長篇。西暦2024年(来年!)の世界は人口の増加と食糧問題、そして国際間の緊張関係が続いていた。このままでは人類の滅亡は避けられない。その唯一の打開策として人間を火星に適応できるよう改造し、ロジャー・トラウェイがその重責を担うことになるが…。サイボーグを火星に送り込む科学者たちの苦闘もさることながら、一人の人間としてのトラウェイの心理的葛藤、特に妻ドリーとの関係を軸にした愛情の問題にも切り込んだ点は、単なるサイボーグSFにとどまらない深みを作品に与えている。
2023/04/26
すらっぱ
サイボーグの製造過程を描いているだけなんだけど、体のパーツひとつひとつが、機械に置き換えられていく不気味さが圧倒的。人が“何か別のもの”に変わるさまは、それだけで面白い。心理と形状が変質すればするほどご飯がおいしくなる。この本の主人公は、設定としては人類を救うスーパーヒーロー、世界のみんなに愛されている。でも、その外見そして精神は、もはや人間ではなくモンスターそのもの……。ゾクゾクくるね! 締めも素晴らしかった。すべての謎を解き明かし、それでいて新たな不気味な謎を暗示させるやり口。パーフェクツ。
2014/01/07
ふじい
本棚整理中に発見、再読。 火星探査のため宇宙飛行士を改造する話。 本文中に言及される通りイメージは日本の特撮、 仮面ライダーであろうか。 米中冷戦のなか人権無視で改造されるおどろおどろしい 記憶であったが、少々違った。 現代SFの主要テーマにつながる着地はあざやか。 すばらしい。
2021/04/20
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